ロレックス『エクスプローラーⅠ』の種類を徹底解説!現行モデルからプレミアムモデルまで買取価格も調査

高級腕時計に興味がない人でも、どこかで必ずその名を耳にするであろう最上級ブランド、ロレックス。バブル時代の名残か、過度かつあまり良い意味ではない富裕のイメージをその名に抱く人もいるかもしれません。しかし腕時計が高く評価されるのは、その名でも価格でもなく、あくまで誠実な機能性です。今回はその本質を貫いたロレックスの歴史的名作、エクスプローラーⅠについてご紹介します。

ロレックスの人気モデル『エクスプローラーⅠ』とは?

きらびやかなイエローゴールドとステンレス、ダイヤがあしらわれた華美な文字盤。ロレックスと言えばデイトジャストに代表されるドレスモデルを思い浮かべる方も少なくないことでしょう。

しかしロレックスについて、もう一方の方向性であるスポーツモデルを抜きにして語ることはできません。

そのスポーツモデルにおける代表作のひとつが「探検家」の名を冠したこの『エクスプローラーⅠ』。優れた視認性をもたらす極めてシンプルなデザイン、オールステンレスの硬質な容姿は、ロレックスが持つ純粋で堅牢な美しさを映しています。

高級腕時計の代名詞「ロレックス」

かつて日本各地における大都市の夜に映えたロレックス。当時においても今と変わらず高級腕時計の代名詞であったため、多くの余裕を持った人々に求められた当然の結果ともいえますが…付随したイメージは率直なところ、あまり華麗とは言いがたいものであったのではないでしょうか。

高級品は丁重に扱われなければ精彩を欠き、本来持ち合わせている高貴さも歪むもの。豊かさにかまけて資産トロフィーのような着用で消耗されていったロレックスには、かくして悪い印象がつきまとうようになっていったのです。

…けれど、それはあくまで日本におけるイメージの話。ましてやかつての熱狂から遠く離れた今、ロレックスに向けられる評価はふたたび高い透明度を取り戻しつつあります。

ロレックスを確固たるブランドへと押し上げた功績としては、三大発明が有名でしょう。
1927年、15時間15分ものあいだドーバー海峡の遠泳にさらされ、誰もが不可能と考える中で一切の狂いなく動き続けていた防水機能、オイスターケース。

続いて1933年に特許を取得し、それまで手巻きしかなかった腕時計の概念をくつがえした自動巻き機構、パーペチュアル(=永久)ローター。そして1945年に誕生した、午前0時付近で日付が瞬時に切り替わるデイトジャスト機構。

今では当然のように存在するこれらを実現したのは、どのメーカーよりも「究極の実用性」を追求し続けた唯一無二の技術力のなせるわざでしょう。この軌跡こそが、1905年の創立から一世紀以上を経ても揺るがぬ最高級の地位にふさわしい華美と言えるのではないでしょうか。

ロレックスのエクスプローラーⅠの歴史

エクスプローラー(=探検家)の名が示すとおり、エクスプローラーⅠは1953年、世界で初めてエベレストの登頂に成功したイギリス探検隊所属のエドモンド・ヒラリー卿とチベット人シェルパのテンジン・ノルゲイをたたえ、探検家のための時計として誕生したモデルでした。

それだけではなく、もともとはエベレスト登頂達成の際にもロレックスから贈られたオイスターパーペチュアルをヒラリー卿(一説によるとヒラリー卿ではなくノルゲイ)が装着していた深い縁もあり、エクスプローラーⅠはこの歴史に刻まれた快挙と合わせて語られるようになっていったのです。

装飾性ではなく視認性に重きを置いた究極のシンプルデザイン。過酷な環境下にも正確さを失わない緻密かつ高度な技術の粋。開発の年数を重ねるほどに上がっていく衝撃吸収能力、耐久性。活動時間を問わない夜光機能。
他にも微に入り細に入り考え抜かれたその性能は、派生モデルへのエクスプローラーⅡとともに今もなお磨き続けられています。

エクスプローラーⅡって?エクスプローラーⅠとどう違うの?

探検とは空の下に限った話ではありません。陽の光も届かない広大な洞窟や鉱脈へ挑むのもまた、人類史において行われ続けた探索行のひとつです。

しかし昼夜の境目を見失う闇の中で時に休息を挟むような長い探索の道、わずかな明かりでふと腕時計へと目を凝らしたとき…短針が示す「8時」は果たして午前なのか午後なのか、その一瞬で正しく認識することは可能でしょうか?

そんな環境を想定し、エクスプローラーⅠに24時間針と24時間目盛入りベゼル、日付表示を加えて最適化されたスポーツモデルこそがエクスプローラーⅡです。

多機能であるぶんシンプルさや直感的な視認性の点ではエクスプローラーⅠに軍配が上がりますが、そもそも魅力のベクトルが大きく異なるデザイン性。派生モデルとはいえ比較・検討の俎上に載せるのは妥当ではないかもしれません。

エクスプローラーⅠの人気モデルについてご紹介!Ref.とは?

1953年の誕生から半世紀が経ったエクスプローラーⅠ。オイスターケースを筆頭にはじめから驚異的な性能を誇っていたロレックスの腕時計ですが、その技術力の研鑽は止まらずに進歩を重ね、モデルチェンジとスペックの更新は現代においても続いています。

たくさんあるのは分かったけれど、じゃあどのモデルが人気で、どのモデルが比較的手に入りやすいの?…そんな疑問を持たれた方のために、まずは現在代表的とされているエクスプローラーⅠのモデルをご紹介しましょう。

エクスプローラーに限らず、ロレックスのモデルを正しく確認するには時計のブレスを外した12時の位置に刻印されている数字、リファレンスナンバー(Ref)を参照するのが一般的です。

現行モデル:エクスプローラーⅠ214270

2010年に発表され、現在も公式に取り扱われている現行モデルです。

従来のモデルとの違いは、

  • 3mm大きくなった39mmケース
  • 夜光塗料には青く光る蓄光塗料クロマライトを採用
  • ブレスレットの留め具はさらに頑健さを強化したオイスターロック
  • ムーブメントの心臓部を衝撃から守る耐震装置(パラフレックス・アブソーバー)

などが挙げられますが、2016年にマイナーアップデートを行ったため、実際には前期モデルと後期モデルという区別もなされています。その違いは3-6-9の3つの数字における夜光塗料の有無。前期モデルはこれが行なわれておらず、後述の「ブラックアウト」になぞらえてブラックアウト仕様とも呼ばれています。

2000年代モデル:エクスプローラーⅠ114270

2001年から2010年までのあいだに生産されていたモデルです。

このモデルの特徴は、

  • 36mmケース(14270と同様)
  • 夜光塗料には緑色に光る蓄光塗料ルミノバを採用
  • ブレスレットの留め具は生産時期を問わずダブルロック
  • フラッシュフィット(ケースとブレスレットをつなぐ部分)が一体化

などが挙げられます。
特に最後に挙げたフラッシュフィットパーツの一体化は、装着時にガチャガチャせずしっくりとした安定感を得られるとして高い評価を受けました。その完成度の高さに加え、シンプルさをスマートに際立たせる小振りな36mmケースへの根強い支持もあいまって、214270(現行モデル)より114270を支持する人も多いようです。

1990年代モデル:エクスプローラーⅠ14270

さかのぼること1988年、エクスプローラーⅠの生産は一旦中止となっていました。それから2年の沈黙を経て発表された新作がこの14270モデルです。

  • 36mmケース
  • 来モデルからインデックスの視認性向上、ムーブメントの精度向上、風防の強化
  • 夜光塗料には経年で効果が消える自発光物質トリチウムを採用、90年代後半からは蓄光塗料ルミノバへ変更
  • ブレスレットの留め具はシングルロック、90年代半ばからダブルロックへ変更

マイナーアップデートを数回重ねているため、文字盤のデザインが異なることも。購入の際は仕様をしっかりと確認する必要があります。

そしてこの14270を紹介する上で外せないのはやはり、日本におけるエクスプローラーⅠの人気と知名度を広め一気に押し上げた1997年放送の伝説的ドラマ「ラブジェネレーション」の存在でしょう。
全11話の平均視聴率30.8%という驚異の数値を記録したこのドラマにおいて、主演俳優がしばしば時間を確認するたびに映し出されるRef.14270。やがては「キムタクモデル」の呼称を得、品薄と価格高騰の渦を巻き起こしたのです。

約四半世紀に及ぶロングセラー:エクスプローラーⅠ1016

14270の先代モデルである1016は、1963年の誕生から1988年まで、じつに25年ものあいだ生産され続けた特別なエクスプローラーⅠとして知られています。

従来の50m防水から100m防水へと新たな進化を遂げた防水機能、近年のエクスプローラーⅠモデルの根幹となる優れたデザインなどが特徴として語られますが、後期モデルに秒針停止機能(ハック機能)を搭載したことでさらにその評価を高めることとなりました。

しかしいくら優れているとはいっても、これほど型の古い時計なら市場価格はかなり下がっているのでは…と思いきや、さにあらず。その存在は「アンティーク」「ヴィンテージロレックス」と呼ばれる格別の領域へと到達しています。

純正パーツの在庫の有無、さらには正規の修理自体も依頼可能なのかどうか。生産終了から今年で30年も経過しているとなれば考えないわけにはいかない問題のはずですが、それらと1016の価値はもはやまったく無関係なのかもしれません。中古市場での価格は現在も上がり続け、100万円からのスタートが基準となっているようです。

エクスプローラーⅠのブラックアウトとは?プレミアモデルのこと

先に少し触れましたが、エクスプローラーⅠには「ブラックアウト」と呼ばれるモデルが存在することをご存知でしょうか。

ロレックスのモデルは型番で区別されており、ブラックアウトも例に漏れません。主にref.14270、そのなかにごく一部存在する特定個体を指すのが「ブラックアウト」。エクスプローラーⅠにおいて群を抜く人気と例外的な個性を放つレアロレックスです。

エクスプローラーⅠの文字盤と言えば3-6-9のみのシンプルなインデックス。通常は黒い文字盤に白く浮かび上がっているものですが、ブラックアウトはこれにならわず、縁取りだけで数字を描いたデザインになっているのです。
些細な点ながらエクスプローラーⅠの印象を変えるダークでスタイリッシュな雰囲気は、希少性もあいまって熱烈な支持へとつながりました。

ちなみに他モデルのブラックアウトはどうなのでしょうか?
ref.214270は前期モデルがブラックアウト仕様で作られており、マイナーチェンジによって白文字へと転換しました。現行の後期モデルよりも前期モデルのほうが需要が高い、という現象も起きているようです。

ref.114270のブラックアウトはというと…実はかつてその実在すら疑われていました。個体数が非常にかぎられているため現在でも市場流通はほぼ見られない、最上級プレミアモデルです。

エクスプローラーⅠは新品で買えるの?中古価格、買取価格は?

ここまでのご紹介を読んでくださった方にはもうお分かりのことと思います。

エクスプローラーⅠは多岐にわたる機能違いやデザイン違いを取り揃えたモデルではなく、連綿と研究・研鑽され続けていくロレックスの技術の粋を凝縮した「その時代最高の一作」だけが冠を継承していくモデルなのです。

つまるところ「エクスプローラーⅠ」が欲しいのであれば、かつてのような生産を停止した沈黙の期間が生じないかぎり、いつでも公式サイトで新品を購入できる…と、言いたいところなのですが。
旧型モデルに惹かれてしまった場合、探索行を選び取ることは免れないかもしれません。

新品の定価と購入可能なエクスプローラーⅠのモデルについて

現在新品で確実に購入可能なエクスプローラーⅠとは、現行モデルのref.214270のみを指しています。市場価格は80万円ほど。

214270の発売が開始したのは2016年。最新鋭の機能を搭載、飛躍的に向上した視認性、デザイン的にも伝統を正しく受け継いだ申し分なく優秀なモデルであることは疑いようがありません。

モデルによって異なる中古価格

旧型モデルに付随する「生産終了」という単語の強烈な誘惑を一度振り払い、それでも36mmケースなど現行モデルにない魅力に惹かれてしまった場合…新品を手に入れることは思考の端か外にいったん置いておくことをおすすめします。

中古価格の設定には使用と保存の状態が大きく関わってくるため、同一モデルでも価格に開きがあるのは当然のことです。それでも比較的平均値が安価に設定されているモデルは14270(非ブラックアウトモデル)でしょう。

少々余談となりますが、前期モデルに用いられている夜光塗料のトリチウムは経年によって発光性を失ってしまうものです。もちろんメンテナンスに出すことで夜光機能は修復可能ではあるものの、その際トリチウムではなくルミノバなどに変更されてしまうため、気になる方は中古品購入時にご注意くださいね。

次に114270と214270ですが、この2種はケースサイズという点で支持層が異なってくるためか、現時点ではまだあまり大差はついていません。ただ、生産終了となった114270の希少価値が経年で増していくのは、ほぼ約束された成り行きではないでしょうか。

アンティークである1016に関しては価格の下降を期待すべきではありません。欲しいと思ってしまったならいさぎよく購入するのが吉かと思います。

ロレックス エクスプローラーⅠの買取価格の目安とは?

中古販売価格が新品販売時の価格をゆうに超えることもあるロレックス。
世界的な資産価値が認められていること、ステータスアイテムとして非常に有効的なことなど、購入者が確実に見込めるため買取価格も安定しており、現行モデルの214270でも50万円超えが見込めます

生産終了モデルやブラックアウトなどのレアモデルとなればますます高騰していますが、何店舗かの業者に打診して買取価格を算出してもらうことがよりよい取引の鍵となるでしょう。

ただし、古いモデルであるほど販売可能な状態へと整えるメンテナンスの費用がかかります。業者側の負担にはなりますが、そのぶん買取価格が下がってしまうもの。せめて保存状態にはくれぐれも気をつけておきたいものですね。

外さないロレックス。エクスプローラーⅠで高級腕時計の存在感を知ろう

虚飾が高級であり続けられる年数はそう長いものではありません。たえず移り変わる自然に飽きることがないように、磨かれて多彩に輝き続ける芯があってこそ人は魅力を感じることができるのではないでしょうか。

エクスプローラーⅠの極限まで削ぎ落とされたシンプルな美に触れたなら、きっとロレックスの本質を心ゆくまで堪能させてくれることでしょう。