宝石を購入すると、「鑑別書」や「鑑定書」というものが付いてくることがあります。この鑑別書というものはいったいどういうものなのでしょうか。鑑定書との違いはどんなところなのでしょう。そして、鑑別書はどのようなところから発行されるのか、解説していきます。
真珠などの宝石を購入するとついてくる「鑑別書」と「鑑定書」の違い
すべての宝石につけられる鑑別書
鑑別書は基本的にどんな宝石にも付けることができ、専門の機関が化学的に宝石を分析してくれます。内容は、その宝石がどのような石なのかを示すもので、宝石の評価・価値や産地などの品質が記載されているものではありません。
天然か合成か
鑑別書の内容の項目に、その宝石が天然石か人工処理が施されているかが記載されています。人工処理がされている場合は、どのような処理が施されているのかが書かれています。
宝石の分析
その宝石について、詳しく化学的に測定されてサイズやカット、重さなどが記載されています。分析内容は、硬度・屈折率・比重・偏光性・蛍光性・分光特性などです。
ダイヤモンドだけにつけられる鑑定書
鑑別書がどんな宝石にも付けられるのに対し、鑑定書はダイヤモンドにだけ付けられるものです。別名、ダイヤモンド・グレーディング・レポートと呼ばれる鑑定書は、0.3カラット以上のダイヤモンドに発行されるのが一般的で、4Cと言われる品質評価が記載されています。
4Cとは、カラット・カラー・クラリティー・カットのことです。カラーはD~Z、カットはEXCELLENT~POOR、クラリティはFLAWLESS~I3、カラットは数が記載されます。
ひとつの石に対してひとつの鑑定書が発行されるため、複数のダイヤモンドで作られているジュエリーはその石の数だけの鑑定書が必要になります。そのため、鑑定書の費用がその分かかってしまうので基本的には鑑定書が付きませんが、鑑別書の発行は可能です。また、鑑定書には産地や価格の記載がないのが一般的です。
鑑別書の発行について
鑑別書の発行を依頼する機関
宝石を鑑定・鑑別する機関はたくさんあり、そこでは多くの鑑定士が活躍しています。宝石の鑑定士は民間の機関の資格で国家資格ではありません。鑑定書や鑑別書は機関によって多少の差があり、鑑定が甘い場合もあります。
宝石の鑑定や鑑別の基準を一定に定めるために、日本国内では宝石鑑別団体協議会(AGL)があります。このAGLに加盟している機関であれば、鑑定基準が定められているので信頼できます。以下の機関は代表的な信頼できる機関です。
GIA(米国宝石学会)
世界で最も権威のあるアメリカにある鑑定機関で、ダイヤモンドを取引する際に重要な「4C」を定めたのがこのGIAです。日本のAGLもGIAの評価基準を基にしているほど、信頼できる機関です。
また、GIAが鑑定したダイヤモンドには、ガードル部分に顕微鏡でなければ見えないほど小さなレポートナンバーが刻印されています。もしも鑑定書を失くしてしまっても、このレポートナンバーがわかればオンラインで内容を確認することができます。
AGT ジャムラボラトリー
日本国内で最も厳しく適正な鑑定・鑑別を行っている日本最大の鑑定機関で、鑑定だけではなくGIAと提携して宝石学の教育も行っています。また、CGLはカラーダイヤモンドの色識別には定評があって、色合いが微妙なダイヤモンドの鑑定はAGTの鑑定証が必須です。
CGL(中央宝石研究会)
AGL加盟のCGLは、AGLの初代会長を務めた方が創業者である日本国内最大手の鑑定機関です。世界で初めてハート&キューピット(H&C)の鑑定をサブレポートして添えたのはこのCGLです。
また、ダイヤモンドスパークレポートの開発も行っています。そして、世界有数の鑑定機関であるHRD(Hoge Raad voor Diamant)と提携していることもあって、世界的な信頼も得られるようになってきています。
鑑別書の発行にかかる料金
宝石の鑑別書は、専門機関に依頼して鑑別してもらう必要があります。鑑別書は鑑定書よりは安くすみますが、約3,000~5,000円ほどです。鑑定書は1つのダイヤモンドにつき、1つの鑑定書が必要なため、複数の石がついていればその数だけ必要です。しかし、鑑別書は複数の宝石があるものでも1つの鑑別書です。
鑑別書の見方について
鑑別書で大事な部分は鑑別結果で、その他の項目は鑑別結果にたどりつく過程が書かれています。鑑別書には産地や価格は書かれません。記載の内容は以下の通りです。
鑑別結果
天然石か人工処理が施されているかが書かれます。人工処理がされている場合はどのような処理がされているかが記載されます。
透明度と色
透明度は、透明・半透明・不透明で判断され、それと色相が記載されます。
カラット(重量)
宝石の重量はカラットで表示されます。1カラット(1ct)=0.2gです。重量の後ろに「刻印」と記載があるものは、リングなどに入っている重量の刻印のことです。ここには貴金属品位(Pt950)などと記載される場合もあります。
寸法
「縦・横・深さ」の寸法を1/1,000mmまで測定します。ものによっては測定ができないものがありますが、その場合は省略します。
屈折率
宝石の種類によって、固有の値を持つのが屈折率です。光が空気中から宝石に入るとき、その境で起きる屈折を記載します。
比重
物質の空気中の重さと同体積の水の重さとの割合で、宝石は種類によって固有の比重値があります。
偏光性
宝石に光が入り、屈折するときに宝石内部で2本に分かれ屈折して進むものを複屈折性と言い、1本のままで進むものを単屈折性と言います。これは宝石の種類で異なります。
多色性
複屈折性の宝石で色がついている石の場合、見る方向によって色が変わって見えることがあり、これを多色性と言います。これは宝石の種類により見え方が違ってきます。
蛍光性
紫外線を宝石に当てると、その紫外線を吸収し人の目に見える色の光に変わり、発散されることがあります。これを蛍光性といいますが、宝石の種類によって異なります。
分光性
同じ色に見える宝石でも種類によってどうしてその色になったのか異なります。この検査は宝石に光を当てて特徴的な光の吸収を調べます。
拡大検査
宝石の内部を宝石用実体顕微鏡で数十倍に拡大して検査します。その石特有の特徴や天然特徴を調べます。
鑑別書がないと偽物と判断されるの?
宝石を購入した時についてくる鑑別書は、実は鑑別書の代金が宝石に上乗せされています。店によっては宝石の価格を抑えるために本物であっても鑑別書を付けない店もあります。そのため、鑑別書がないから偽物とは言えません。
宝石自体の値段が10,000円だとして鑑別書が5,000円だった場合、鑑別書をつけて15,000円で宝石を買いますか?日常身につけるお手頃な値段のジュエリーだったら安く買えたほうがいいと考える人は多いのではないでしょうか。
ただし、買い取ってもらいたいときには鑑別書や鑑定書があるほうが宝石が本物だと証明できるので、あったほうがいいとも言えます。
メリットデメリットを考えて鑑別書をつけてもらいましょう
鑑別書は宝石の代金に鑑別料を上乗せしていると述べましたが、宝石自体の価格がそれほど高くない場合は鑑別書を付けることで価格が高くなってしまいます。
婚約指輪など高価なジュエリーの場合は鑑別書を付けることをおすすめしますが、普段使いのアクセサリーで価格を抑えたい場合は鑑別書を付けなくてもいいかもしれません。鑑別書があることのメリット・デメリットをよく考えて鑑別書を付けもらうか決めるといいのではないでしょうか。