大事な革製品やペットのお手入れに必要な豚毛ブラシ。でも、豚毛ブラシっていろいろな種類があり、どのように使ってよいか迷う方も多いのではないでしょうか。豚毛ブラシについて基本的な情報を知り、毎日のお手入れに役立ててみましょう。豚毛ブラシでブラッシングすることで、良い状態を長く保つことができるようになります。
豚毛ブラシとは
豚毛ブラシは、革製品の手入れや人や愛犬の毛のブラッシングに使われる手入れ用ブラシです。豚毛は『ぶたげ』と呼び、豚の毛を原料とします。豚の毛には脂肪分が多く含まれており、しなやかで弾力があることからブラシや筆などの材料として使われています。毛先は硬い肌触りで、手にチクチクとした感触が残ります。
豚毛ブラシの原料でもある豚にも品種があります。豚の品種により毛質も違い、利用の用途に合わせて選ぶと良いでしょう。ここでは豚の品種と豚毛の特徴についてご説明いたします。
黒豚毛
国内黒豚は、イギリス原産の黒豚と日本の豚を掛け合わされたもので、400年以上の歴史があります。日本では鹿児島の奄美大島で古くから生息した島豚と、イギリスから持ち込まれたバークシャー種が掛け合わされています。
品種改良が繰り返され、現在ではかごしま黒豚が有名です。1回の出産で8頭前後しか生まれないため、豚の中でも稀少価値の高い品種になります。黒豚の毛は1本の毛が長く硬さもしっかりあるため、比較的扱いやすい豚毛です。
白豚毛
一般的な豚のイメージは白豚から定着したものです。黒豚に比べて早く育つことから、市場には生産性の高い白豚が多く流通しています。白豚の毛は、黒豚よりも少し柔らかく、適度な硬さで表面をなでる肌触りが特徴です。1回の出産で12頭前後生まれ、豚の中では入手しやすい品種になります。
1本の毛は長く、毛質は黒豚に比べるとやや柔らかいので、あまり刺激を求めないデリケートな場合に使われます。
豚毛ブラシと猪毛ブラシの違い
猪毛は『いのげ』と呼び、猪の毛のことを指します。豚毛に比べて毛質はとても硬く、ハードな肌触りが特徴です。そのハードな肌触りから、地肌をしっかり刺激するので、頭皮の血行促進の効果があります。薄毛を予防できると期待されており、男性のヘアブラシとして注目が集まっています。
ただし、毛質はとても硬いので、やりすぎには注意しましょう。硬いブラシでのブラッシングは、頭皮の地肌を傷つけることになり、炎症を引き起こします。炎症により抜け毛を誘発リスクが高まるので、赤みや痛みを感じたらかかりつけ医に相談しましょう。
豚毛と猪毛の硬さの違い
豚毛に比べると猪毛の毛質はかなり硬く、耐久性に優れています。デリケートな肌触りを求める場所には向いておらず、繰り返し手入れする場合に利用されます。地肌までしっかり毛をとかしたい場合には硬い猪毛がおすすめです。毛質は硬く奥まで入り込んだ汚れもしっかり落としてくれます。
豚毛は猪毛にはよりも毛質は柔らかく、コシもあるため女性に好まれる傾向にあります。毛が長い方や長さの短い方に向いています。
静電気が起こりにくい
獣の毛は適度な水分と油分を含んでおり、摩擦による静電気が起こりにくい特徴があります。猪毛の方が水分も油分も多く含んでいることから、まとまりのある髪に仕上がります。豚毛は使い始め硬いですが、使い込むことで猪毛が馴染み、更に使い心地も良くなります。
豚毛ブラシの種類と効果
天然皮革用豚毛ブラシ
天然皮革用豚毛ブラシとは、天然の皮革の汚れ落としや艶出しに使われるブラシです。天然皮革用の豚毛ブラシは、力を均一に掛けやすいよう持ち手が長方形に仕上げられています。毛先も持ち手に合わせて水平に揃えられています。ヘアブラシに比べ、ひと回り大きいサイズのものが主流です。
硬くコシのある毛質は革クリームを均一に伸ばして保湿するのに適しています。ブラッシングを繰り返すことで、天然の革が持つ本来の艶を出すのに役立ちます。コシが強いので、力強いブラッシングでも革そのものを傷つけることなく、摩擦で光沢のある風合いに仕上げることができます。
ベビー用豚毛ブラシ
ベビー用豚毛ブラシとは、赤ちゃんの毛をとくのに使われるブラシです。赤ちゃんの頭は骨がしっかり形成されておらず、とても柔らかな状態です。ナイロン製などのブラシの場合、頭皮を痛める場合があるので、豚毛ブラシが使われます。豚毛の適度に硬くコシのある毛質は、赤ちゃんの柔らかな頭を傷つけずに髪をとくのに適しています。
天然の毛は静電気が起こりにくいため、柔らかな髪をまとめるのにも適しています。寝返りにより毛がチリチリになりやすいので、豚毛ブラシでしっかりといてあげると、自然な艶のある髪に仕上がります。ベビー用豚毛ブラシは、持ち手が丸みをおびたデザインになっており、万が一乳児が口にしても安心の作りになっています。
ペット用豚毛ブラシ
ペット用豚毛ブラシとは、愛犬などのペットのブラッシングに使われるブラシです。両面がそれぞれ違う種類の毛になったブラシが便利で、長毛短毛のペットにも適しています。豚毛ブラシの適度な硬さでマッサージ効果があり、ペットの健康を守るのにも役立ちます。
豚毛ブラシは静電気が起こりにくいため、毛並みをそろえるのに最適で、チャンピオン犬のように毛艶がよくなると喜ばれる方も多く人気のアイテムです。
洋服用豚毛ブラシ
洋服用豚毛ブラシとは、衣服の繊維を揃えるのに最適で、生地そのものの艶を出すのに使われるブラシです。スーツやしっかりとした生地の衣服に使われます。繊維の流れが整えられ毛玉ができにくく、ブラッシングと合わせて毛玉を取り除く効果の付いたブラシも存在します。
豚毛ブラシで繊維をブラッシングすると、押しつぶされた繊維の目が整い起き上がります。起き上がった繊維の目から、風が通り抜けることで、繊維の奥まで柔らかくなり自然な肌触りの質感を戻ります。風通りのある繊維は、生地の寿命も長くなります。
豚毛ブラシで手入れした衣類は、静電気が起こりにくいので、衣服をかけている間にホコリが付きにくくなります。冬場に起こりやすい繊維の静電気の発生も抑えてくれます。
その他の豚毛ブラシ
豚毛の適度な硬さが頭皮マッサージとして注目される
豚毛ブラシは地肌に適度な刺激を与えてくれるため、頭皮の血行が促進されると注目されています。血行が良くなることで栄養が行き渡り、健康的な毛を育てる効果が期待されています。濡れた髪に使うと摩擦が起こりやすく、髪や地肌を傷つける場合があるので注意が必要です。
スノーボード用の豚毛ブラシも存在する?!
スノーボードの板は雪の上を滑るので、ソール面はつるつるとしたワックスのイメージがあります。実は地面と触れるソールを触って見るとザラザラとした目に見えない溝加工が施されています。触ると手触りの違いに気づきます。春先などの水分の多い雪に水ハケとして役立ちます。
この溝に土やワックスなどが溜まるため、豚毛ブラシを使って掻き出します。全体重をかけて押しがけするように使います。
ガーゼで豚毛ヘアブラシの手入れを楽にする
豚毛ブラシも使うことで次第にホコリや汚れが付着します。摩擦によりブラシ自体の毛も抜けてきます。密度の高い豚毛ブラシは、毛の奥に汚れが残りやすく、こまめな手入れが求められます。特にヘアブラシの場合には、長い毛が絡まって取れにくいなど、思っていたより時間も手間も掛かります。
そんな時、ガーゼを有効的に使うことで、豚毛ブラシの手入れが劇的に変わります。ここでは、豚毛ブラシの手入れが楽になる方法をご説明いたします。
- 豚毛ブラシよりもひと回り大きくガーゼを切る
まずはガーゼを準備します。定期的に交換するものなので、ある程度量のあるものを選ぶと良いでしょう。 - 豚毛ブラシから突き抜けるようにガーゼを押し込む
ひと回り大きく切ったガーゼをブラシに押し込んでいきます。豚毛ブラシの毛を上に向けて、その上にガーゼを被せます。串やクリーナーブラシを用意します。ガーゼの端から豚毛が突き抜けるようにグイグイ押し込んでいきます。まるでガーゼから豚毛が生えたような姿になります。 - 余ったガーゼを背面で結ぶ
ブラシの両端に余ったガーゼは、ブラシの背面で結んでおくと使うときに邪魔になりません。結びにくい場合には、ガーゼをもうひと回り大きく切ると良いでしょう。 - ガーゼごとグイグイ引っ張り抜く
使っていく内に、密集した豚毛ブラシの間にホコリや抜け毛が溜まります。横から透かすように覗き込むとよく見えます。ホコリや抜け毛が溜まっていたら、背面の結びを外し、豚毛ブラシの端からガーゼを取り除きましょう。一気に引っ張ると豚毛ブラシの毛が抜けてしまうので注意が必要です。端から少しずつグイグイと引っ張るように毛を抜いていきましょう。
豚毛ブラシから取り除いたガーゼは、そのまま結んでしまえば簡単に捨てることができます。
衣類には豚毛と馬毛のブラシを使い分ける
洋服のブラシには豚毛と馬毛のものがあり、それぞれ繊維の種類によって使い分けます。豚毛はコシがあって丈夫な毛質のため、織り目が細かなしっかりした生地に使われます。シルクやカシミヤなどのデリケートな生地には硬すぎるため注意が必要です。デリケートな生地の場合には、豚毛よりも柔らかな馬毛のブラシを使いましょう。
靴は色ごとにブラシを使い分ける!その使い方は?
天然皮革の靴に使う豚毛ブラシの場合には、革の色ごとにブラシを用意すると良いでしょう。使うにつれて色落ちする皮革の補色に使います。色ごとに分けることで、ブラシの奥に残った別の色が色移りすることなくお手入れできます。
豚毛ブラシで靴磨きする方法
実は古くなったクリームが残ったまま、靴磨きすると革本来の艶が濁ってしまう場合があります。古くなったワックスと新しいワックスが混ざることでこの現象が起こります。古くなったワックスを豚毛ブラシでしっかり取り除くことが靴磨きにおいて重要なポイントです。
汚れた豚毛ブラシの手入れはどうする?
豚毛ブラシも使い続けることで、毛の間や表面など汚れが付いていきます。天然の毛は水に弱く、水洗いは極力避けた方が良いでしょう。普段のケアは手で取れる範囲を毎日行いましょう。手で取れない汚れは、豚毛ブラシ用のお手入れブラシ(クリーナー)での手入れがおすすめです。
豚毛ブラシを擦り合わせてホコリを取り除く
もし豚毛ブラシが2本あれば、お互いを擦り合わせると奥のホコリを掻き出すことができるのでおすすめです。歯ブラシと擦り合わせても問題ありませんが、天然の豚毛が傷まないように注意しましょう。
豚毛ブラシのクリーナー
抜け毛の絡まりやすいヘアブラシには、ヘアブラシ専用のクリーナーを使い掃除しましょう。ブラシクリーナーの形状は、熊手のような形状から、毛が枝分かれしたような形状までメーカーによってさまざまです。
個人的にはしっかり汚れを掻き出すことのできる、細長い1本ブラシがおすすめです。豚毛と豚毛の間に差し込み、絡まった抜け毛をしっかり掻き出します。
豚毛ブラシの洗い方
豚毛ブラシは天然の毛が使われているので、水洗いは極力避けた方が良いでしょう。汚れによってどうしても水洗いしたい場合、高い確率で動物のニオイが強くなるため注意が必要です。
- 石鹸をぬるま湯で薄める
純石鹸をぬるま湯に薄めて洗浄液を作ります。シャンプーの場合、界面活性剤などの化学物質が入っているので、豚毛を痛める場合があるので注意が必要です。純石鹸を薄めたぬるま湯にブラシを入れ、軽く振りながら汚れを浮き出します。 - ブラシから汚れを揉み出す
クリーナーブラシを使い、豚毛ブラシの汚れを丁寧に揉み出します。 - 水分を拭き取り乾燥させる
豚毛ブラシが洗い終えたら、タオルの上でしっかり水切りをおこないます。
長く愛用したいなら豚毛ブラシでケアすることが大事
ここまで、お手入れに必要な豚毛ブラシについて話してきました。豚毛ブラシも毛の間にホコリや抜け毛が溜まってきます。そのまま使い続けるのは衛生上にも良くないので、豚毛ブラシをこまめにケアすることも大事です。新しくブラシを買い換える時の参考にしてみましょう。