レザーのカシミアとして優しい手触りが特徴のディアスキンは、日本人にとって馴染みのある素材です。ディアスキンと聞くと、傷つきやすいので扱いづらいものと思われがちですが、実は他の革に比べると革自体に脂が多く含まれているので、お手入れが簡単で非常に扱いやすい素材です。今回はディアスキンの特徴や種類、万が一汚してしまった場合の対処方法とディアスキンのアイテムを手に入れる前に知っておきたい情報を紹介します。
レザーのカシミアディアスキンとは
メスの鹿の革から作られているのがディアスキンです。実は日本人にとても馴染み深い素材で、古くは武具として弥生時代から始まったとも言われています。特に昔は足袋の素材として鹿革が用いられていたそうです。
また、鹿は世界中で幸運の象徴と言われている動物です。特に中国では「鹿」と「給料」の発音が同じなので、そこから鹿は財運の象徴とされ、鹿の財布は財運アップのアイテムとして人気があります。
ディアスキンの特徴
ディアスキンはレザーのカシミアと言われているように、牛革や豚革とは違う特徴があります。そこで次はディアスキンの特徴について紹介します。
柔らかい手触りで柔軟性が高い
レザーのカシミアと言われるだけあって、繊維が細く、とにかく肌触りが柔らかいのが最大の特徴です。また昔は足袋の素材と使用されていたというだけあって、柔軟性も高い素材です。
通気性が抜群
ディアスキンは通気性も良く、湿気に強いのが特徴です。そのため湿気の多い日本においては最適の素材です。通気性に優れていて、着用しても蒸れにくいので手袋の素材として多く使われています。
軽くて丈夫
ディアスキンはとても軽いのも大きな特徴のひとつです。足袋の素材として昔から使用されていたことを考えると、軽くて丈夫な素材だと言えます。
お手入れが簡単
ディアスキンはお手入れが大変と思われていますが、油分を多く含んでいるので、お手入れの時に油分を補給することがなく、非常に簡単にお手入れができます。また、水に濡れてしまっても油分が失われることがないので、安心して雨の日も使うことができる素材です。
ディアスキンのメリットとデメリット
ディアスキンのメリットは、湿気に強く通気性が高い、まるでカシミヤのような柔らかな手触り、型崩れしにくく、丈夫、お手入れが簡単の4つです。
鹿は他の動物に比べると皮膚を構成する繊維が細く、その極細の繊維が寄り集まった細い繊維束がいくつも絡み合っています。そして、その繊維にコラーゲンが絡みつく構造になっています。ディアスキンの繊維はこのようにコラーゲンをたっぷり含んでいるので、水に強く、劣化しにい、そしてまるで人肌のような柔らかな肌触りなのです。
一方デメリットは表面が剥離しやすく、傷がついてしまいやすいことです。特に引っかききずに弱いため、使用する時には注意が必要です。
ディアスキンが使用されるアイテムはバッグや靴・グローブなどさまざま
このようなディアスキンの特徴を生かして、バックや財布だけでなく、ジャケットなどの衣料品や手袋などのファッションアイテムとして使用されています。特に通気性が高く蒸れにくく、柔軟性があることを生かして高級な手袋や靴、武具の素材としてよく使われます。
他の革の場合は使い続けている内に伸びきってしまいますが、ディアスキンは伸びても元に戻る性質を持っているので、型崩れの心配がありません。革の手袋を購入する時にフィット感があるものを選びたい時は、ディアスキンの手袋がおすすめです。
そして、ディアスキンを使ったアイテムとして代表的なものが印伝です。印伝はディアスキンをなめして漆で模様を施した日本の伝統工芸品です。お土産品として昔から人気の高いアイテムです。特に甲州印伝は国によって伝統工芸品として認定されています。
このような事実からもディアスキンは昔から日本人にとっては長く愛されてきた素材と言うことができます。
ディアスキン以外の鹿革の種類
エルクレザー
エルクレザーは北米や北ユーラシア大陸に生息する大鹿のヘラジカから作られています。最近では大型のエルクレザーは希少価値が高いと言われています。
エルクレザーはとても厚く柔らかな素材なので、加工がしやすい素材です。また大型の鹿の革のため、厚みのあるハード感と使うごとにてくる深みが特徴です。もちろん鹿革ならではの特徴はそのままのため、丈夫で柔軟性があり加工しやすいことから特に男性向けの財布などのアイテムとして使用されることが多いです。
バックスキン
バックスキンはスエードと勘違いることも多いのですが、バックスキンはオスの鹿革の表面をサンドペーパーで擦って起毛させた素材です。見た目が美しく、しなやかなため手触りがいいのが特徴で、コートやパンツ、帽子などの素材として使用されることが多いです。
ただし最近は本物の鹿革で作られたバックスキンは少なく、牛やヤギのクロムなめし革の裏面をサンドペーパーで起毛させたスエードや、牛革の表面を起毛させたヌバックもバックスキンとして扱われています。
セーム革
セーム革は鱈の油を使ってなめし加工を施した鹿革です。さまざまな鹿の革で作られていますが、日本国内で多く出回っているセーム革はキョンという小型の鹿の革が多いです。繊維が細く、柔らかい手触りが特徴です。革を加工する時に鱈の油を使ってなめすことで、革の繊維が引き締められて、吸水性や保湿性がさらにアップします。
通常、革を丸洗いすると、革が乾く時に油分が失われることでガサガサと固くなってしまいます。しかし、セーム革は水に濡れたとしても乾く時に油分を失わないので、洗ってもしなやかさがなくなることはありません。
このように耐水性が高く、水洗いすることができるため、手袋や洋服の素材として使用されることが多いです。また、その手触りの良さから楽器や貴金属などのホコリや汚れをとるための布としても活用されています。
ディアスキンのお手入れ方法
ディアスキンの日常のお手入れ
ディアスキンは他の革に比べると、皮膚繊維に皮脂を多く含んでいることからほとんどお手入れの必要がない使いやすい素材です。
日常的にお手入れをする場合は、毛先の柔らかい馬毛ブラシなどで軽くブラッシングしてしてホコリやゴミをとるだけで十分です。ディアスキンは引っかき傷に弱いので豚毛や化繊など硬い毛のブラシは表面を傷つけてしまう恐れがあるので避けましょう。
ブラッシングでは取れない汚れがあった場合は、起毛素材専用の汚れ取りスプレーを使用するのもおすすめです。使用する場合は、汚れがついている部分に軽くスプレーをして、汚れた部分を軽く叩くようにとっていきます。汚れが取れたらブラッシングで仕上げをして終了です。
ディアスキンの汚れがひどい時は専用ワックスオイルを
黒ずみ汚れの場合、柔らかい起毛した布を使って汚れを拭き取るように大きく円を描きながらやさしくこすることで落としせます。
ディアスキンは長く使うことでツヤが出てきます。ツヤが出てきたディアスキンの場合はディアスキン専用ワックスオイルを使うのもいいでしょう。ただし、オイルなどを使用する時は、目立たない場所で試してから使うようにしてください。
ディアスキンの水洗いの仕方
ディアスキンと同じ鹿革の中でも、鱈油でなめし加工をしたセーム革は水洗いをしても問題ありません。セーム革の場合は水洗いをしても革の手触りやしなやかさは失われませんが、色落ちやシミの原因になってしまうこともあるでの、あまり頻繁にしないようにしましょう。
また、水洗いできるからといって洗濯機で洗うと型崩れの原因になってしまうので、できれば手洗いの方がいいでしょう。手洗いをする時はぬるま湯に薄めた中性洗剤を入れて優しく洗います。この時に少し酢を加えることで色落ちを防ぐことができます。濡れた状態の革は他のものに色移りしてしまいやすいので注意して下さい。
乾燥させる時は折り目がついてしまわないように、平らな面に広げて形を整えてから乾かすといいでしょう。バックなどの立体的なものの場合は、中に新聞紙などを詰めて形を整えて乾かすのもおすすめです。乾いて固くなってしなやかさが失われた場合は、揉むことで柔らかな風合いが戻ってきます。
長期間保管する場合は
しばらく使用しない時は不織布や天然素材の通気性のいい袋に入れて保管しましょう。バックの場合は中に新聞紙など詰め物をして保管してください。
ビニール袋に入れて保管すると、ディアスキンの表面にビニールが張り付き、革の表面が剥がれて痛めてしまうこともあります。また、上に物を置いたり重ねて保管してしまうと、型崩れやシワの原因になるので注意しましょう
お手入れが簡単なディアスキンのアイテムをこの機会に手に入れませんか?
日本の気候にあって、昔からいろいろなアイテムの素材として使われてきたのがディアスキンです。ディアスキンは他の革に比べると脂を多く含んでいるので、簡単なお手入れで大丈夫な素材です。
通気性や柔軟性にも優れているのでバックや財布だけでなくジャケットや手袋などいろいろなアイテムの素材として使用されています。まだディアスキンのアイテムをお持ちでなければ、この機会に手に入れてみませんか?