革の種類と加工法・特徴・手入れ法を大解説!基礎知識を知って適切な革を選ぼう

良い革・高価な革ほど、丈夫で美しいと思われがちですが、実は大きな間違いです。傷つき汚れもする革ですが、その難しさゆえに革本来の美しさや奥深さに魅了されます。この記事では、革の種類やお手入れ方法をご紹介いたします。

革になる動物の種類とは?

原料皮は動物の大きさによって区別され、およそ11kg以上の牛や馬などの大動物はハイドと呼ばれます。それ以下の仔牛や羊に豚など小さな動物はスキンと呼びます。そこから半裁したサイド、肩部のショルダー、背中のバット、腹部のベリーなど部位ごとに分けられます。

革になる動物の中で、使用量が非常に多いのは牛革です。

牛

牛の革は最も利用されている革素材です。

生後約2年の雌の皮はカウハイド、生後3年以上の去勢されていない雄はブルハイド、去勢されている成牛をステアハイドと雄雌によっても種類が分けられます。それとは別に、月齢によっても種類が分けられており、胎児の毛皮はハラコ、生後6ヶ月までをカーフスキン、生後2年までをキップスキンに分けられます。

牛の皮は食用として加工されることから、安定的に市場に出回る皮革で、使用用途は幅広くさまざまな革製品で使用されております。

ハラコ

ハラコとは不幸にも母牛のお腹で亡くなってしまった胎児や、生後まもない動物の革です。動物の種類により異なる部分はあるものの、胎児の毛皮は細かなビロード状のような柔らかい毛が特徴です。胎児の体格は小さいことから、皮として取れる面積も少なく、希少性の高い皮革です。牛の胎児から取れる毛皮はアーボンカーフと呼ばれています。

市場ではまず見ることは無いと言ってもいいほど出回ることはなく、一般的にハラコ素材として販売されている多くは、模造品のポニーの革が使われています。模造品からフェイクハラコとも呼ばれ、豹やゼブラの仔から取れたハラコに似せたフェイクハラコも存在します。

カーフ

カーフとは生後6ヶ月までの仔牛の皮で、質感は薄く柔らかく、きめ細かい肌で、毛穴もほとんど目立ちません。体の部位による組織の差が少なく、最高級の素材として扱われています。カーフは牛革の中で最も上質とされており、革本来の美しさを活かすため、型押しなどの加工をほとんど行いません。

カーフスキンは生まれて半年以内の革で、育つ過程でつく傷はほとんどありません。

生まれてから生後3ヶ月以内の革をライトカーフまたはベビーカーフと呼びます。1頭から取れる範囲も少なくカーフの約半分からしか取れません。

キップ

生後6ヶ月から2年までの牛の革を指します。カーフよりも厚みがあり柔らかな質感から衣類などにもよく使われます。仔牛と成牛の間という意味から中牛革とも呼ばれます。

カーフに次いで上質とされており、生後6ヶ月サイズでは型抜きできない場合にキップスキンが使われます。カーフとキップを区別しているのは日本だけで、海外ではキップも含めてカーフと呼ばれています。

ステアハイド

生後半年までに去勢した雄の牛が生後2年まで成長した革を指します。去勢することで闘争本能が薄れ、育つ過程でできる傷も少ないのが特徴です。市場にも出回りやすく手頃な価格の革製品にはステアハイドの牛革が使われております。

去勢されていない雄の革をブルハイドと呼び、活動的に育つため傷が残ることも多いのが特徴です。あえて傷のある革を必要とする場合や強靭さを必要とするライダースジャケットを除き、主に靴の底など目に触れない場所に使われることが多いです。

カウハイド

カウハイドとは、生後2年で仔牛を出産したことのある雌牛の革を指します。生後2年以上の牛を成牛と呼びます。雄の牛に比べると質感は柔らかく、肌のきめ細かさもあります。出産を経験しているために腹部まわりのきめ細かさは粗くゆるいのが特徴です。

出産経験のない雌の革をカルビンと呼び、カウハイドよりも上質とされています。

馬

馬は運動量がとても多く、余分な脂肪もすくないことから皮が薄く軽くて柔らかい革が特徴です。薄さの割に丈夫です。

コードバン

コードバンとは、馬のお尻の部分を使った硬くて張りのある革を指します。1頭から取れる面積は少なく希少性の高い皮革です。

豚

豚は日本で唯一自給できる皮革で、ピッグスキンは人気が高く海外にも輸出されています。豚の皮は、摩擦に強く耐久性があり、通気性に優れています。湿気のこもりやすい靴の中敷きや鞄の内装に使用されることが多いです。

羊

羊の革は牛革に比べると薄くて軽く柔らかいのが特徴です。弾力のある質感で保温性にも優れている性質もあります。

ラム

ラムとは、生後1年以内の仔羊の革を指します。毛穴が小さく、表面のきめも細かくしっとり手に馴染むような柔らかいさが特徴です。中でも生後6ヶ月までの革をベビーラムスキンと呼びます。

シープ

シープスキンとは、生後1年を過ぎたなめされた羊の革を指します。牛革に比べると肉厚はとても薄く、しなやかで柔らかいのが特徴になります。

ムートン

ムートンとは、毛皮の付いた羊の革を指します。断熱効果が高く、防寒用の衣類や靴として利用されることが多いです。

その他の動物

ワニ、トカゲ、ヘビなどの爬虫類を総称してエキゾチックレザーやレアレザーと呼ばれています。その他にも羽毛を抜いた跡が特徴のダチョウの革も存在します。柔軟性があって長持ちするので、エキゾチックレザーと同様に人気があります。

財布に使われる革の種類とお手入れ方法

財布に使われる革の種類とお手入れ方法

カーフスキン(6ヶ月以内)

革財布に使われる皮革の中で最も利用されるのは牛革で、上品で柔らかいカーフスキンは育つ過程でできる傷も少ないことから婦人向けのフォーマルな長財布として使用されることが多いです。

カーフスキンのお手入れ方法

生後6ヶ月までのカーフスキンは、柔らかく繊細で美しくある反面、軽くひっかくだけで傷がついてしまうこともあります。乾いた布を使い汚れやホコリを拭き取ります。クリームはデリケート革でも使えるタイプの物を選ぶといいでしょう。湿気の少なく風通しの良い場所での保管がおすすめです。

コードバン

コードバンの革は光沢もあり硬く張りのある革ですが、革の厚みは薄く財布として使うには芯材が必要になります。

コードバンのお手入れ方法

使い始めの頃は柔らかな布で乾拭き程度のお手入れがおすすめです。コードバンは光沢のある革で、お手入れ用のクリームを使うことで革表面の艶が損なわれてしまう場合があります。革の表面が乾燥した場合だけにするなどがおすすめです。

エルクレザー

エルクレザーとは、大鹿の革を指します。野生の大鹿は育つ間にいくつもの傷が付きます。最近では市場で見かけることも少なくなり、模造品の牛革をクロム鞣して似せた革が使われています。鹿の革は丈夫で通気性が高く蒸れにくいのが特徴です。

エルクレザーのお手入れ方法

鹿の革は基本的にホコリや汚れを拭き取る程度で、よほど乾燥した場合を除いてクリームなどでのお手入れは必要ありません。

革靴に使われる革の種類とお手入れ方法

革靴に使われる革の種類とお手入れ方法

ベビーカーフ(生まれてから3ヶ月以内)

ベビーカーフとは、生後3ヶ月以内で原皮の重さが6.8kgまでの革を指します。高級なカーフに比べてさらにしっとり柔らかいのが特徴です。革の厚みは薄く美しいきめ細かさから、歩くことをあまり前提としない婦人靴のドレスシューズに利用されます。

ベビーカーフのお手入れ方法

ベビーカーフの革は、とても柔らかな素材なのでシワになりやすく、特に足先の曲がるアッパーの履きシワには注意が必要です。必ずシューキーパーを入れて、しっかり履きシワを伸ばすように保存しましょう。

お手入れ方法は全体を撫でるように優しくブラッシングが基本になります。特に中底と本底の間にはホコリが溜まりやすいので注意が必要です。掻き出すようにブラッシングするといいでしょう。

保湿用のクリームはデリケートな革にも使えるタイプの物がおすすめです。ナチュラルなカラーの場合、シミになる場合もあるので、目立たない部位でテストしてから全体に馴染ませるように使います。

ムートン

コートなどにも使われるムートンですが、保温性の高さから防寒用のブーツにもムートンの毛皮が使用されます。

ムートンのお手入れ方法

基本的には毛先が細く柔らかな馬毛ブラシを使って靴についたホコリを落とします。毛並みに沿って優しく整えるようにブラッシングします。ムートンの靴は保温性が高い半面、湿気が靴の中に残りやすくもあります。使った後は除湿乾燥剤と合わせてシューキーパーで保存しましょう。

ムートンの毛皮も摩擦に弱く抜け毛の原因ともなります。擦りすぎず優しく毛並みに沿って手入れが基本となります。

ハラコ

現代でハラコと称される革の殆どは、ポニーから取れる馬革が使われています。

ハラコのお手入れ方法

基本的には毛先が細く柔らかな馬毛ブラシを使って靴についたホコリを落とします。毛並みに沿って優しく整えるようにブラッシングします。ハラコ素材の革製品は水洗いやクリーナーを使っての汚れ落としができません。美しく長持ちさせる方法は、雨の日や泥汚れなどが気になる日には履かず汚さないようにすることが大事です。

ジャケットに使われる革の種類とお手入れ方法

ジャケットに使われる革の種類とお手入れ方法

ステアハイド(生後2年以上経過した去勢済みのオス)

ステアハイドは、去勢したことで闘争本能が失われ、育つ過程でできる傷も少なく、大きな範囲を必要とするジャケットに多く使われます。成牛に成長した牛の皮は分厚く、一般的に紳士向けのライダースジャケットに使用されます。

ステアハイドのお手入れ方法

ステアハイドのライダースジャケットは、分厚い革で丈夫な反面、湿気がこもりやすくカビが発生しやすくもあります。ステアハイドのお手入れ方法は、ハンガーにかけて日陰干しでしっかり乾かしましょう。汚れが目立つ場合には、硬く絞った柔らかな布で染み込まないようにサッと拭き、乾くまでしっかり拭き取りましょう。

しかし、乾燥させ過ぎには注意が必要です。季節の変わり目にはミンクオイルを使ってしっかり保湿しましょう。ステアハイドなどの分厚い革には、しっかりした豚毛ブラシで仕上げると良いでしょう。

カウハイド(生後2年の出産経験のあるメス)

カウハイドはステアハイドに比べると質感は柔らかく肌のきめ細かさがあります。婦人向けのライダースジャケットで多く使われます。

カウハイドのお手入れ方法

基本的にカウハイドもステアハイドとお手入れの仕方は同じで、湿気によるカビの発生には注意が必要です。特に使わなくなる春から秋にかけて、定期的に風通しの良い場所で湿気を飛ばし、ミンクオイルでしっかり保湿しましょう。ホコリが被るからと、クリーニング店で使われているビニールをかぶせるのは、カビを発生させる原因となるので避けましょう。

ホースハイド

ホースハイドは希少価値が高くて柔らかい質感の馬革です。素材は薄く上品な艶があるので婦人向けのレザージャケットでも多く使われています。

ホースハイドのお手入れ方法

ホースハイドのお手入れ方法は、通気性もよく革も薄いことから比較的手軽に手入れすることができます。普段は乾いた布で全体の汚れを拭く程度で十分です。オイルを使ったお手入れは、返って馬革本来の艶を失う可能性があります。乾燥しすぎた場合を除き、馬毛ブラシでのブラッシングで十分です。

ラム(生後1年以内の仔羊)

ラムスキンは、毛穴も小さくしっとり肌に馴染むような柔らかいさが特徴で、婦人向けのレザージャケットに多く使われます。しぼと呼ばれる小ジワが美しいのも特徴です。

ラムスキンのお手入れ方法

ラムスキンは牛や馬革と違い、光沢の少ないマットな質感が魅力の革でもあります。艶ありのクリームは避けると良いでしょう。ラムスキンのお手入れ方法は、基本的にはカーフやキップと変わりありません。柔らかな布で全体の汚れを落とし、デリケート革でも使えるタイプのクリームで保湿しましょう。

色の明るいラムスキンは水によるシミが目立ちやすく、ジャケットを購入したら防水スプレーすることをおすすめします。近距離で噴射した場合、スプレーに含まれている成分が元でシミになるケースがあります。手のひら2つ分ほど離して吹きかけるように注意しましょう。

ディアスキン

ディアスキンは、軽く通気性が良くきめ細かさの美しい鹿革です。汗の出やすい紳士向けのレザージャケットで多く使われています。とても軽く柔らかなディアスキンですが、表面の革が剥離しく鹿革の味と捉えて使われる方向けの皮革でもあります。最近ではメガネのレンズや宝石の脂汚れを拭き取るのに利用されることも増えております。

ディアスキンのお手入れ方法

ディアスキンは特にお手入れを必要としない皮革です。皮そのものに油をたっぷりと含んでいるので、乾燥しすぎた場合を除き、クリームによる保湿も必要ありません。使うことで艶の出てきたディアスキンには、柔らかな布に数滴のオイル付けて馴染ませるといいでしょう。

傷の付きやすいディアスキンは、大きく円を描くように磨くと良い艶がでてきます。

革の表面加工

革の表面加工

動物の皮が持つ素材本来の風合いや質感は、表面加工の仕上げの種類によって、さまざまな表情に変化します。

銀付き革

銀付き革とは、皮をなめして染色したシンプルな革で、本染め革とも呼ばれています。動物から取った分厚い原皮は、加工する製品にあわせて2枚~3枚にスライスします。革の表面を銀面といい、銀面の付いた革のことを銀付き革と呼ばれています。育つ過程でつくシワや傷、血筋なども皮本来の風合いを損なうこと無く染めることができるが特徴です。

銀付き革のお手入れ方法

銀付き革は、皮の風合いを活かした仕上げ加工が多く、使い続けるうちに出る質感の変化を楽しむことができます。しかし、耐水性が低いために色落ちがしやすく、水によるシミも付きやすくもあります。また、皮の状態によってクリームの吸収もムラがあり、保湿剤が原因で色ムラになる場合もあるので手入れは慎重におこないましょう。

乾燥が気になる場合には、ごく少量のクリームを目立たない場所でテストしましょう。染込み過ぎないよう気をつけ、柔らかな布で磨くと艶が戻ります。

ガラス革

ガラス革の仕上げは、成牛の革にクロム鞣しをおこないます。がラス板やホーロー加工の鉄板に張り付けて仕上げるのでガラス加工と呼ばれています。革の表面を均一に削り、上から顔料で光沢を出して仕上げるので、光沢のある革に仕上げることができます。

ガラス革のお手入れ方法

耐久性に優れていますが、顔料で仕上げているため、保湿系のクリームは浸透しないデメリットがあります。ガラス革のお手入れは、全体的な汚れを落とし、艶の出るクリームで仕上げるといいでしょう。

パール革(メタリック仕上げ)

パール革の仕上げは、革の表面にパール系の顔料を吹きかけ、見る角度によって表情を変え、金属のような光沢を表現した仕上げ加工です。エレガントな雰囲気の製品に使われることが多く、他の革に比べても控えめで、落ち着きのある光沢感が特徴です。

パール革のお手入れ方法

パール革は顔料を吹きかけ仕上げられているので、基本的にはガラス革のお手入れと変わりはありません。エレガントな製品に多く使われることから、ラメ入りの艶出しクリームで仕上げると、更に上品さが出るのでおすすめです。

エナメル革

クロム鞣しの革に光沢や耐水性のある樹脂を吹きかけ仕上げられています。革の中では耐水性に優れており飲みこぼしによる水シミに強い仕上げ加工です。ただし、雨の日に履いて出る靴にはなっておらず、エナメル革の樹脂に雨シミが付着すると取り除くのは困難なので注意が必要です。

エナメル革のお手入れ

エナメル革は、水に濡れると分解される場合があります。エナメル用のクリーナーを使いましょう。乾いた布でしっかり拭き取り磨き上げることで美しい光沢を取り戻します。

型押し革

型押し革はエンボスレザーとも呼ばれ、革をなめした後にプレスで型をつけることで、クロコダイルやトカゲなど希少性の高い革に似せることのできる加工です。

型押し革のお手入れ

基本的には、成牛のお手入れ方法と変わりありません。型押しの種類により溝に深さがあるので、豚毛ブラシをつかって汚れを掻き出します。その後、保湿クリームを全体に馴染ませ、柔らかな布で磨けば革本来の艶を取り戻します。

オイルレザー

オイルレザーとは、オイルを染み込ませることでしなやかな革になり耐久性も増す加工です。使い込むことにより染込んだオイルが溶け出し、艶のある革へと変化します。

オイルレザーのお手入れ

オイルレザーは油分を染み込ませて仕上げる革で、汚れやホコリが付きやすい性質をもっています。しっかりブラッシングすることが大事で、豚毛ブラシを使い縫い目に入り込んだホコリもしっかり落としましょう。お手入れ時にオイルをムラなく塗り磨き上げることでオイルレザー特有の艶が楽しめます。

ヌメ革

ヌメ革とは、タンニンでなめし染色や必要以上に手を加えず、革本来の良さを留めた加工です。蛍光灯の光や、直に手で触るだけでも変色するほどデリケート状態で、紙に包んで保管するのが一般的です。

ヌメ革のお手入れ

ヌメ革は水の影響をもっとも受けやすく、少量の水でもシミや色落ちの原因となります。汚さず濡らさないことが、最大のお手入れと言ってもよいでしょう。使い始めにしっかり天日干しすることで、革本来の美しさを保つことができます。

とにかく奥の深い革の種類と魅力

良い革・高価な革ほど、丈夫で美しいと思われがちですが、実は大きな間違いです。特に革製品となると、高価になるほど、繊細で手がかかる革が使われているケースがほとんどです。希少性が高く手に入りにくい皮革ほど、汚れやシミに弱く、普段遣いというよりも歩くことをあまり前提としないドレスシューズに使用されます。

ちょっとしたことで傷ついたり汚れたりもする革ですが、その難しさゆえに革製品の奥深さを感じ、魅了される方もいらっしゃいます。傷をつかないように守り、美しい状態を保つために保湿するなど、愛でる・育てるという表現がとてもぴったりで、気にかけてあげるほど革本来の表情を楽しむことができます。