ロレックス『GMTマスター2』は硬派でドレッシーな腕時計!青黒・赤青・黒黒・ペプシと知っておきたいベゼルのこと

高級腕時計メーカーのパイオニアといえば、やはりロレックス。全世界において高い資産価値が認められているこの屈指のブランドは、黎明期からの多彩で巧妙なブランディング戦略とそれを力強く裏打ちする革新的な技術力によって、不動の地位を獲得し現在に至っています。『GMTマスター2』も例にもれず、高い知名度と実用性を備えたモデルのひとつ。そしてさらに持ち合わせるのはなんと言っても個性でしょう。今回は硬派でドレッシーなロレックスをご紹介します。

『GMTマスター2』とは?

「GMT」とその名にあるとおり、『GMTマスター2』は「Greenwich Mean Time」、「グリニッジ標準時」という時間基準への対応をコンセプトに開発された腕時計でした。

この「グリニッジ標準時」は簡単に言えば世界的な基準(標準)として定めた時刻のこと。イギリスのグリニッジ天文台が観測する時刻であるためにこの名が付きました。イギリスと経度が異なる他国ではGMT+1や+2などで時差を表し、日本はGMT+9となります。日本時間での19時はイギリスでの10時、ということですね。

1884年に世界基準の時刻として認められたGMT。しかし現在の世界基準はUTC(協定世界時。英語ではCoordinated Universal Time)という、1960年頃から試験運用されていた時刻系が採用されています。UTCは天文台での観測よりも高精度で安定した原子時計によるもの。ロレックスはなぜGMTの名を選んだのでしょうか?

『GMTマスター』のファーストモデルの開発着手が1953年であったこと。GMTと自国時間、異なる2つのタイムゾーンの精密な把握を同時に可能とする腕時計の開発を求められたこと。精密な把握が必要な理由は、GMT設定を基準とする機械が絡んでいたこと。それらが現在の『GMTマスター2』へと至っています。その機械が何であったかはまた後ほど。

スポーツモデルでロレックスの技術と歴史を知る

ところで、ロレックスにはドレスモデルとスポーツモデルがあることはご存知ですか?

たとえばデイトジャストやデイデイトなど、白銀の容姿が目立つドレスモデル。ロレックスの名を聞いたときこちらを想像する方も多いのではないでしょうか。研ぎ澄まされたシンプル、エレガントでフォーマルなスタイルはまさに高級腕時計ブランドらしい洗練された美しさを誇っています。

その一方で、スポーツモデル。登山やマリンスポーツなどを想定しての機能特化はもちろん、クロノグラフ、極めて高い防水性、中には耐磁性など、ひとつ残らずロレックスの技術力を知らしめる見本のような特殊モデルが揃っています。機能性を重視した結果備わったベゼルやときおり姿を見せるカジュアルモデルらしいカラーリングは、まさにドレスモデルの対極。

いずれにもロレックスの技術と歴史は詰め込まれています。しかしあくまでスマートさを崩さず満遍なく改良されるドレスモデルに対し、新作が発表されるたび純粋に特性が強化されていくスポーツモデルには、飽くなき挑戦と試行錯誤の記憶が刻まれ続けているように感じられる…というのは、主観的ながらひとつの傾向として提言させていただきましょう。

知っておくべき『GMTマスター2』の特徴

先述したとおり、『GMTマスター2』はグリニッジ標準時と自国時間の両方を同時に参照できる腕時計の開発を求められて生まれたものでした。2種の時刻を把握する必要がある…それはつまり、時差が生まれるほどの距離を往復するのが常態ということ。

そう、依頼主は航空会社です。それも当時もっとも有名なアメリカの国際線航空会社であったパン・アメリカン航空(パンナム航空)が、パイロットのためのオフィシャルウォッチをロレックスに依頼したのが『GMTマスター』の始まりでした。開発を経て1955年の発表後、その運用実績からまたたく間に他の航空会社にも採用され、当のパイロットたちからも高い評価を得ます。

時は流れて1982年、3つのタイムゾーンを把握可能としたモデルが生まれました。これこそが『GMTマスター2』。2つのタイムゾーンを対象とした初代モデル『1』と新型の『2』がひと目で見分けられるようにと行なわれたのが、ベゼルの色分けです。

正確には初期モデルの時点でベゼルのカラーリングは行なわれていました。初代モデルは赤と青。単なる軽率なカラーリングではなく、6時と18時を境目にして昼と夜を視覚的に区別する機能的観点からのデザインです。初代『2』であるRef.16760は、この配色をコカ・コーラを思わせる赤黒のみとし、『1』との差別化を図りました。

ちなみにこのRef.16760、従来のGMTマスターと比較してケースの厚みが目立つことから、「ファットレディ」の通称でもよく知られています。

のちにこのベゼルのカラーリングが、『GMTマスター2』を語る上で欠かせない要素となったのです。

『GMTマスター2』…『1』はないの?

さてその『1』ですが、率直に言えば上位互換モデルである『GMTマスター2』に勝るのは難しく、とうとう1999年に生産終了となってしまっています。しかし人気がないかと言えばまったく別のお話。

『1』の初期モデルであるRef.6542。生産されていたのは1954年から1959年と非常に短い期間で、現在ではまさにアンティーク、ヴィンテージロレックスに該当する稀少存在となっています。『GMTマスター』の中で唯一ベゼルの素材がプラスチックであったことなどから、状態の良いものとなるとほぼ入手不可能と考えるべきでしょう。

『1』のヴィンテージモデルにこだわるのなら、機能性の面でもセカンドモデルのRef.1675がおすすめです。1960年から1980年ものあいだ製造されていたこのロングセラーモデルなら、状態良好品の入手もそう非現実的なものではありません。

青黒、赤青、黒黒…ペプシ?『GMTマスター2』にまつわる色の話

ベゼルのカラーリングが「GMTマスター」の歴史と密接なものであることは先にご紹介しました。では現在はどのカラーリングが製造されていて、どれが人気のあるモデルなのでしょうか?

遊び心はベゼルにあり!カラーバリエーションの紹介

初代の『GMTマスター2』であるRef.16760は赤黒の「コーク」ベゼルのみでした。しかしセカンドモデルのRef.16710は赤黒の「コーク」に加えて赤青の「ペプシ」、黒(黒黒とも言われます)の3種類で展開されることになります。

次に2007年に発表されたサードモデル、Ref.116710LN。従来のステンレススチールやホワイトゴールドではなく、ロレックスが特許を取ったセラミック素材「セラクロム」を用いたベゼルは非常に頑強で、黒黒の硬質さは何よりビジネスシーンにも馴染むことから高い人気を誇りました。コンビモデルのRef.116713LNは、ブラックにイエローゴールドの文字と縁取りが映える個性派です。

しかしその一方で、実はセラミック素材へのカラーリングは非常に高度な技術力を要するものでした。2013年に誕生したRef.116710BLNRでようやくその問題の解決が証明されます。シックでスタイリッシュな青黒のベゼルは根強い人気を持ち、定価を軽く超えるプレミア価格で取引されています。

他にも、2014年に『GMTマスター1』の代名詞とも言える赤青を復活させたRef.116719BLROや、2005年の「GMTマスター」50周年記念に作られたRef.116718LNは、黒緑のベゼルとイエロー一色のブレス&ケース、グリーンダイヤル(またはブラックダイヤル)と飛び抜けて強い個性を放っています。

そして現行モデルは3種類。赤青を「GMTマスター」のイメージカラーに復帰、定着させる気配が見えるRef.126711CHNRはスタンダードモデルと言えるでしょう。他の2種はというと、茶黒のベゼルにオイスタースチールとエバーローズゴールドを組み合わせたベルトのRef.126711CHNR。さらにエバーローズゴールドを全面に押し出したRef.126715CHNR。

このエバーローズゴールドですが、2005年頃に開発されたロレックスの発明品にあたります。美しい色合いに加えて「ever」と名付けられている通り経年変色に強いことが特徴。というのも通常ピンクゴールドは金と「赤み」となる銅を混ぜることで作られるため、銅の性質である変色のしやすさが回避しきれない難点だったのです。

特許も取得済みのこのエバーローズゴールド、公式でもロレックスのアイコン的存在として推されています。

コーディネート、シーンとの相性は?

ロレックスのドレスモデルといえばやはりフォーマルなコーディネートやビジネススタイルに完璧にハマるもの。しかしスポーツモデルとなると趣に差が出ます。かしこまった場での使用を考えているのならやはり黒黒のRef.116710LNがベター。青黒のRef.116710BLNRもクールな選択でしょう。

また、最新モデルのRef.126711CHNRも候補に挙げられます。ローズゴールドという名称から手に取りにくく感じる男性もいるかもしれませんが、実は日本人の色にしっくりと落ち着いて映える色味。茶黒のベゼルと合わせて見るとむしろ大人にこそ似合う特別な高級感が漂います。

一方プライベートで着けるのなら、気取らない赤青や赤黒も魅力的です。彩度が高すぎないためラフなスタイルに合い、目にした人にも印象付けられること間違いないはず。

『GMTマスター2』の定価・買取・中古…各価格について知りたい!

カラーリングもモデルも多様な『GMTマスター2』。最新モデルがあるということは廃盤になったモデルもあるということ。その定価や買取価格、中古価格もさまざまですが、目安などを軽くご紹介したいと思います。

最新GMTマスター2モデルのラインナップと定価・販売参考価格

  • Ref.126710BLRO(赤青):定価¥950,400→販売価格¥1,975,280
  • Ref.126711CHNR:定価¥1,447,200→販売価格¥1,972,980
  • Ref.126715CHNR:定価¥3,888,000→販売価格¥4,169,850

ロレックスは世界全体で見ても流通量が少ない上、為替レートの影響を著しく受けます。またこれら3点のモデルは2018年に発表されたばかりの最新作であるため、需要に対する生産が追いついておらず、一時的に爆発的な希少性を見せているのは確か

そういった事情が定価と販売価格の乖離を引き起こしているため、「今一分一秒でも早く欲しい!」という情熱でもないかぎり購入は少し待つべきでしょう。数ヶ月後には需要と供給のバランスが落ち着くはずです。

GMTマスター2の買取価格の目安は?

資産価値として根強いロレックス。値崩れしにくく再販もしやすく、状態が良ければ新品定価の5~8割の価格が惜しみなくつけられます。レア、人気、廃盤…などモデルによってはさらに高騰することもあるため、購入直後から保管状態には気を払っておきましょう。

希少モデル・偽物…気をつけたいGMTマスター2の中古品とその価格

『GMTマスター2』の人気モデルはやはり黒黒(Ref.116710LN)、青黒(Ref.116710BLNR)。特に他の同型モデルが存在していないため、その支持と高騰はしばらく止むことがないでしょう。黒黒は¥1,107,980、青黒は¥1,445,980が参考価格となっています。

ところで、ロレックスにも偽物は存在します。職人の丁寧な仕事と並べるわけもない代物ですが、肉眼でとっさに見抜けるか、ましてやネット上の写真で区別がつくかどうかは、専門家でもないかぎり難しいのが事実です。かといって、信頼のおける中古販売店かどうかを見抜けるかどうかもまた不安なところ。

ひとつの簡単な方法は、店舗を複数展開している大型企業を候補にすることでしょう。抱えるものが莫大であればあるほど、失うことを恐れるのは当然のことです。そのために腕の良い鑑定士を雇い、本物に紛れ込もうとする偽物へ常日頃から目を光らせる必要があるのです。

出張・旅行・資産価値・ファッションのすべてを満たすロレックス『GMTマスター2』

3つの時間帯を観測できるタイムピース。海外出張、はたまた海外旅行愛好者、もちろん飛行機のパイロット。機能性に対する需要は率直なところ特殊で、持て余してしまうと感じる方もいるかもしれません。

しかしブランド品とは機能性のみならず、自分が純粋に楽しみ、上質な満足感を得るためのもの。特別な個性を持った『GMTマスター2』に不満や不足を覚えることはないでしょう。