深い青い色に輝く美しい宝石、サファイアはイギリスの王室を象徴する宝石です。ダイアナ妃が婚約指輪に大きなサファイアの石がついた指輪をもらったことでも有名です。そんなサファイアですが、その価値はどのようなところで判断されるのでしょうか。
サファイアとは
日本では9月の誕生石として親しまれているサファイアは、和名をその色から「青玉」「蒼玉」といいます。サファイアはルビーと同じ鉱物で、同じ石ですが作られる時にクロムという成分が入るかどうかで色が変わってきます。硬度は宝石の中でも高く、宝石の中で一番硬い硬度10のダイヤモンドに次いで、硬度9となっています。
サファイアは古来から「神に近い石」としてあがめられてきました。また、サファイアには災いから守る力が宿っていると信じられていて、古代の王や王妃がサファイアを身につけていたと言われています。
そして、サファイアの指輪を付けると神の声が届くと信じられ、ローマ法王や権力者がサファイアの指輪をはめていました。中世のヨーロッパでは身分の高い者が好んで身につけていたため、高貴な石と考えられていたのです。
今でもサファイアは権力者にふさわしい石という考えは残っています。英国王室では国を守ることを誓う戴冠式で、サファイアの指輪を身につけるのです。
サファイアの価値を決めるポイント
種類(天然か合成か)
サファイアの価値を決めるものに、その石が天然石か合成かは重要な項目です。しかし、石を見るだけでそれを判断するのは大変難しいため、鑑別機関で判断してもらうことが大切です。査定をしてもらうときは、経験がある鑑定士の知識と光学機器を使用すれば判別できます。
そして、サファイアを購入した時に付いてきた鑑別書や保証書は大切に保管しておきましょう。
原産地
サファイアは原産地によって色合いが異なり、その価値や資産性が変わってきます。一番希少性があるのはカシミール産ですが、現在の宝飾マーケットで多く出回っているのはタイ産やカンボジア産のものです。
他には、スリランカ・ミャンマー・オーストラリアが産出国としてあります。産地によっては価値が違いますので、査定のときに値段が変わることがあります。
処理の有無
市場に出回っているほとんどのサファイアは、原石の青色をさらに美しくするために加熱処理を行っています。この処理は昔から行われていて、美しさが保たれていれば基本的に加熱処理をしていても無処理のものと認識されます。
人工的な処理には「トリートメント」というオイルコーティングや着色を行うものがありますが、これは天然の石とは認められず価値が下がります。そして、価値の高さとしたら処理をしていない非加熱の美しい石が一番効果なものになります。
色の濃淡
青い色が美しいサファイアですが、青色が濃くても薄くても価値が下がってしまいます。青色にはいろいろな種類があり、青の色の種類によって価値が変わります。
コーンフラワーブルー
インドのカシミール地方で産出されるサファイアで、ブルーサファイアの中で最も高級な色合いとされています。「幻のブルー」と呼ばれるほど、価値が高い青色のサファイアで、他のブルーとは比べ物にならないほど美しい上品な青色です。
ロイヤルブルー
コーンフラワーブルーに次いで美しいとされる色で、ミャンマーのモゴック周辺で産出されるサファイアです。深みがかった青色は少し紫がかかった上品な色で、イギリス王室が与えた呼称です。
カワセミのブルー
コーンフラワーブルーに大変近い色合いを持つブルーで、スリランカ産の高品質のサファイアに名付けられます。スリランカは2,000年以上も前から宝石の採掘が行われてきていて、この透明度に優れた紫がかった色合いのカワセミのブルーと呼ばれるサファイアは、コーンフラワーブルーに負けない美しさがあります。
インクブルー
インクの青のような黒味が強いサファイアは、オーストラリアで産出されます。少し透明度が劣るため全体的な評価は低く、比較的安価で取引されています。
以上のように、いろいろなブルーのサファイアが出回っていますが、その中でも一番価値が高いのはコーンフラワーブルーです。最近は良質なサファイアが産出されるカシミールであまりサファイアが採掘されなくなってきているため、ますますその価値が認められています。
反面、少し質が劣っていても「カシミール産」というだけで評価が高くなる傾向があります。このように、カシミール産のサファイアが採れなくなってきているので、手元にカシミール産のサファイアがある場合、高値が付く可能性があります。
透明度
透明度については、サファイアは元々内包物が多い宝石なので、美しさに欠けて居ない限りは価値が下がることはありません。しかし、内包物が目立つ場所にあったり傷が目立つ場合はサファイアの値段が下がることがあります。
カラット(大きさ)
サファイアの価値を決めるのに、カラットがあります。宝石のサイズは見た目のサイズではなく、カラット(重さ)で表します。そして、大きなものほど高値がつきます。
バランス
サファイアの価値を判断する基準に、全てのバランスが優れているかという点があります。色や透明度、内包物などさまざまな方面から判断して全体的にどれだけ美しいかを見ます。
サファイアの価値は加熱処理をしているか・していないかでも決まる
市場に出回っているほどんとのサファイアは、加熱処理されたものです。加熱処理とは、原石をより美しく見せるために高温で石を加熱して化学反応を起こし、内部の汚れを取り除いだり色を濃くするものです。これは昔から行われている処理で、加熱処理をしているからといって、石の価値が下がることはありません。
加熱処理をするメリットは石をさらに美しく見せられることです。形や大きさはいいが色があまり良くないというサファイアに加熱処理を施すことで、より美しい石にさせることができるのです。ただ、天然の美しいシルクインクルージョンが合った場合、加熱処理をすることによってその美しさを損なう場合があるので、処理を行わないほうがいい場合もあります。
現在では、加熱処理をしていないサファイアにめぐりあうのは難しいほど、ほとんどのサファイアに加熱処理がされています。天然のものは、石の内部に大変美しいシルクインクルージョンがあります。絹の糸のようなきれいな内包物は加熱処理では出せないものです。
カラー・種類別のサファイアの特徴と価値
ピンクサファイア
ピンクサファイアは、ルビーになりきれなかった石とされています。中でも彩度が高く色が濃いピンク色をしたピンクサファイアは高い値段がつけられます。ルビーに似ていますが、ルビーよりは価値が下がります。しかし、チェリーピンクに似た可愛らしい色ですので、女性から好まれています。
イエローサファイア
彩度が幅広いのがイエローサファイアで、オレンジイエロー、黄金色、レモン色などの色の種類があります。スリランカ産の黄金色のサファイアは「ゴールデンサファイア」と呼ばれて高い値段がつくことがあります。
バイオレットサファイア
アメジストやタンザナイトも紫色の宝石ですが、その中でもバイオレットサファイアは高い値段が着けられます。紫色の色の出方も、濃い色から薄い色まであります。
グリーンサファイア
エメラルドとは異なった深い緑色なのが、グリーンサファイアです。黒っぽい鈍い緑色の物が多いのですが、透明で鮮やかな緑のものも存在します。ライムグリーンやミントグリーンに近い色のものは希少性があります。
パパラチアサファイア
「ハスの花」という意味があるパパラチアサファイアは、色とは別の名前のサファイアです。スリランカ産のピンク色に近いオレンジ色のこのサファイアは「キングオブサファイア」との称号が付いています。
パパラチアサファイアは産出が少なく希少価値が高いサファイアで、高い値段がつきます。ほとんどのものは加熱処理してあるため、天然のパパラチアサファイアに出会えることは稀と言えます。
スターサファイア
色以外の基準として価値を示す基準がありますが、これが「スターサファイア」です。スターサファイアは、サファイアの表面に星のように3本の線が交差して見えるものです。
この星の形から、「運命の石」と呼ばれて表面の線一本一本に「運命」「信頼」「希望」が宿っていると考えられています。内包物の奇跡的な入り方で、スターサファイアができます。しかし、良質なスターサファイアは希少で、深みがある大粒なスターサファイアはかなり希少価値があり、高値となります。
サファイアの価値を高めるために正しいお手入れと保管方法を知っておこう
宝石を高い値段で買い取ってもらうために気をつけることがあります。それは日頃からのお手入れと保管方法です。宝石は汚れてしまうとくすんでしまい、その美しさが損なわれていまいます。それを防ぐためには普段からのお手入れが重要です。
サファイアを身につけると、肌の脂や汗、化粧品などが石に付いてしまいます。使い終わったら外して乾いた布で優しく拭くようにしましょう。そして汚れが目立つ場合は洗面器にぬるま湯を入れて中性洗剤を薄めてその中で洗います。汚れがひどいときは、筆などを使って丁寧に汚れを取ります。
汚れが落ちたら洗面器のお湯を捨てて、新しいぬるま湯を入れて中ですすぎます。すすぎ終わったら乾いた布で拭きましょう。
また、宝石を使うときはお化粧が終わってから身につけるのもポイントです。お化粧品は油分が多いため、石に付くと石を曇らせる原因になります。ヘアスプレーや香水も宝石から遠ざけたほうがいいでしょう。
現在市場に出回っているサファイアのほとんどが加熱処理されていますが、加熱処理されたものは熱に弱いので注意が必要です。熱でオイルや樹脂が溶け出してしまう可能性があるので、家事のときは外しておくようにしましょう。
保管方法ですが、宝石同士がくっつかないようにすることが重要です。サファイアは硬度が高い石ですが、それでも衝撃を与えないようにしましょう。
また、真珠などの柔らかい石を傷つけることになってしまうことがあるので、宝石は個別にしまうのが大切なのです。チャック付きのビニール袋に一つずつ入れるか、ジュエリーボックスなどに入れて保管すると他の石とぶつかることなく保管できます。
サファイアの価値を知って査定に出そう
サファイアは色によって、または青い色の種類によって価値が違ってきます。自分が持っているサファイアがどのくらいの価値があるかを知っていなければ、査定に出してもそれが適正なのか判断できません。サファイアの価値を知り、日頃のお手入れを欠かさないようにして大切に保管を心がけましょう。