宝石の処理方法“トリートメント”とは?エンハンスメントとの違いや買取で気になる価格の低下

鉱山から採掘された宝石は、ものによっては内包物があったり内部にヒビが入っているものがあります。色についてももう少し濃い色だったらもっと価値が出るのに、というものも存在します。そのような石に人工的に手を加えることで宝石としての輝きを与える方法があります。今回はその人工的処理“トリートメント”について解説いたします。

宝石の人工処理“トリートメント”と“エンハンスメント”とは?

宝石の人工処理“トリートメント”と“エンハンスメント”とは?

日本では、JJA(社団法人 日本ジュエリー協会)およびAGL(宝石鑑別団体協議会)に加盟している鑑定機関では、人工的に処理を施した宝石でも自然の石に近いものにおいては天然石として扱われています。

宝石の処理方法は、トリートメントとエンハンスメントがあります。今回は、トリートメントに焦点を合わせて解説していきます。

トリートメントとエンハンスメントの違い

エンハンスメント

エンハンスメントは人工的処理のひとつで、元々の宝石の美しさを損なわないでますます美しいものにするために行う処理方法のことです。代表的なエンハンスメント処理として、サファイアやルビーに施す加熱処理があります。

これは、宝石の色を美しく引き出すための加工処理方法です。日本では、エンハンスメント処理を施した宝石を美しくするための必要最小限の処理として認められていて、エンハンスメント処理された宝石は天然石として価値を下げることはありません。

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トリートメント

エンハンスメント処理が天然石として価値を落とさない一方、トリートメント処理は過剰な加工処理として捉えられているため価値が低くなってしまいます。その理由は、トリートメント処理された宝石は長く美しさを維持することが難しいためです。トリートメントの代表的な処理方法は翡翠の樹脂含浸処理があります。

エンハンスメントとトリートメントの差は、処理をすることで価値が変わらないか変わるかということになります。

トリートメントは宝石として認められるの?

宝石に人工的な処理を施すのは、なんと紀元前のインドでも行われていたのです。4000年以上前のインドでは、宝石を美しく仕上げるための熱処理が行われていました。

上述したように、宝石によっては人工的処理を行ってもその価値が失われることがないものがあります。市場に出回っている宝石の多くは人工的処理されているもので、逆を言えば人工的処理されていないもののほうが珍しいということになるのです。

そのため、人工的処理がされていないものは、宝石としての価値がものすごく高いことになります。反対に過剰な処理が施されているものは、天然石としては認められず価値は低くなります。宝石の処理については、購入する時に鑑別書に記載があることを確認するか、信頼できる宝石店で確認することをおすすめします。

トリートメントの種類

トリートメントの種類

放射線照射処理

宝石の色を変えるため、人工的に放射線を当てて宝石内部の結晶構造を変化させる処理を放射線照射処理といいます。産出された石の中には、大きさは申し分ないのに色が薄いなどのものがあります。

そんなときにこの処理を行ない、より石をきれいに変身させるのです。この処理を行う石は、ダイヤモンド、トルマリン、真珠、トパーズなどがあります。

着色処理

着色処理を行っている宝石は、珊瑚、ターコイズ、真珠、翡翠などです。着色処理とは、人工的に色素によって宝石の色を変える処理のことをいいます。

コーティング処理

珊瑚やトパーズなどの表面にチタンなどの他の物質を蒸着させて、その宝石の色合いを調整する処理のことをコーティング処理といいます。

高温高圧処理

ダイヤモンドやサファイアなどの宝石を、高温高圧下に置くことで人工的に色を変化させる処理のことを高温高圧処理といいます。

トリートメントによって宝石の買取額は変わるの?

トリートメントによって宝石の買取額は変わるの?

「宝石の元々の良さを損なわないエンハンスメント」の場合は、宝石の価値を落とすことなく、天然石として認められていると述べてきました。しかし、トリートメントに関しては「宝石が持っている本来の姿とは関係なく、人工的に外観や色を変えてしまう方法」として、宝石の価値が変わってしまうとされています。

また、トリートメントが施された宝石は太陽の光が直接当たることでひび割れするなど、トラブルが起きる可能性があることから、価値が低くなってしまうのです。宝石にトリートメント処理がされている場合は、宝石の買取額は高額にはならないでしょう。

所有している宝石の処理方法を知っておこう

所有している宝石にどんな処理が施されているかを知っておくことは大切です。買取希望の際に、鑑定士が出した査定額が妥当な額なのか納得できる額なのかを知ることが重要だからです。

宝石の鑑別書には処理方法について記載がありますので、確認しておきましょう。また、購入するときには鑑別書で処理について確認しましょう。そして大事なのはその宝石の相場の価格を知ることです。トリートメント処理されているにも関わらず、相場の値段よりも高いものは買わないようにするなど、対処ができるからです。

宝石を買う場合はこのようにいろいろな知識を持っておくことが必要なのです。