宝石で赤い色をしているものといえば、ルビーを思い出す人が多いでしょう。しかしルビー以外にも「ガーネット」という赤い宝石があります。ガーネットは実は赤い色だけではなく、さまざまな色のバリエーションがあり、緑色やオレンジ色のものがあるのです。今回はガーネットについて詳しく解説していきます。
ガーネットについて
ガーネットの歴史と和名・意味
ガーネットは5千年前の古い時代から存在していました。有名な『ノアの方舟』の伝説では、ガーネットが火の如く輝いて大洪水の暗闇の中からノアたちを導いて、方舟を救ったとされています。
また、ユダヤ教の祭司は「真理を得る石」としてガーネットを身につけていたという話もあります。古代ギリシャ神話の物語に登場するザクロにちなんで、永遠の愛と貞操を誓い合うために恋人同士でガーネットを贈り合っていました。
中世の十字軍の兵士たちは、ガーネットが悪いことを追い払って健康と誠意・忠誠心を高めてくれるものと信じ、甲冑にはめこんで戦っていました。また、ガーネットにはケガから身体を守って戦いの場から生きて帰してくれるものとも信じられていました。
そして、19世紀になり英国ビクトリア王朝時代には、ガーネットをファッションとして身につけるようになっていきました。
日本ではガーネットをザクロを割った時の赤い粒の色に似ていることから「ザクロ石」とも呼ばれています。
ちなみに、ガーネットはラテン語で種を意味する「グラナタス(多くの種子をもったザクロのようなもの)」から名付けられました。ガーネットをザクロに例えるのは日本もヨーロッパでも同じなのですね。
ガーネットの特徴
ガーネットと聞くと赤い小さな宝石だと思う人が多いでしょう。しかし、ガーネットには実にさまざまな色のものがあり、赤以外にオレンジ、黄色、紫色、緑色があります。
ガーネットの産地と成分
ガーネットの産地
ガーネットの産地は、世界中にあってインド・マダガスカル・ケニア・モザンビーク・マリ・タンザニア・ナミビア・スリランカ・ナイジェリア・ロシアなどがあります。そして、その土地によって特徴や色味が異なります。
ガーネットの成分
ガーネットの色のバリエーションは約400もあります。ガーネットが赤い色の宝石だと認識されているのは、鉄とアルミニウムを主成分にしているためです。そして、クロムから緑色というように、成分の組み合わせによって赤い色以外のガーネットができます。
ガーネットの色の種類で異なる価値
デマントイドガーネット
デマントイドガーネットは、ロシアのウラル山脈で採掘される緑色のガーネットです。ロシア以外には南西アフリカやイタリアでも採掘されますが、ロシア産のものよりは薄い緑色のものが産出されます。
デマントイドガーネットはダイヤモンドのように輝く石で、ガーネットの中で最も評価が高いです。ほとんど市場に出回らないため、希少価値が高くオークションに出品されると非常に高い値段で取り引きされることがあります。
次にご紹介するツァボライトよりも黄色がかった緑色が特徴で、この美しさは強い分散光によるものです。また、屈折率も宝石の中では高い方です。
ツァボライト
エメラルドにも匹敵するほどの美しい緑色をしたガーネットが、このツァボライトです。エメラルドと同じ成分であるクロムとバナジウムを含むことで、ツァボライトのような美しい緑色になるのです。
ケニアのツァボ国立公園で産出されたため、その名前がついたツァボライトはグリーン・ガーネットの中でも評価が高いです。ガーネットの中でもグリーンガーネットは、ファンが多く高額での買取が期待できます。
スペサルタイトガーネット
スペサルタイトガーネットは以前、日本では流通が少なく手に入りにくいものでしたが、最近では流通数が増えてきて人気が出てきています。スペサルタイトガーネットの色は基本的には赤ですが明るいオレンジ色のものがあり、これを「マンダリンガーネット」と呼んでいます。
オレンジ色が濃くなると茶色系の色になりますが、市場ではオレンジ色の方が人気があり買取相場も高くなります。反対に茶色が濃くなると価値が下がってしまいます。
ロードライトガーネット
紫色がかかった赤い色のガーネットで、一般的に人気があるガーネットをロードライトガーネットといいます。「バラの花のような」という意味のロードライトという名前のように、バラの花を連想させる石です。スリランカ産は美しい色のものが産出されることで知られています。他の産出国には、マダガスカルやタンザニアがあります。
パイロープガーネット
パイロープガーネットはアルマンディンガーネットと区別がつきにくく、成分を調べないと区別がつかないほどのため、市場では混同されている場合もあります。名前の由来は、ギリシャ語の「炎のような」という意味の「Pyr」からきています。
アルマンディンガーネット
アルマンディンガーネットは濃い赤い色のガーネットで、ガーネットの中で代表的な赤といわれています。透明度があって照りがあるものが人気で高く評価され、赤の他に紫、茶、オレンジのものも見つかっています。日本ではガーネット市場の多くを占めていたガーネットはこのアルマンディンガーネットです。
産出国はブラジル、インドをはじめとした世界各国で採掘されています。ガーネットの中では安価で一般的なもので、多くの人に知られているガーネットです。
ガーネットを売るときに参考にしたい買取相場
かつて日本では、ガーネットは産出量と流出量が多いデマントイドガーネットが市場のほとんどを占めていたため、ガーネットは安く手に入るものだというイメージがついていました。
しかし、希少性のあるガーネットも多くあり、特に赤黒い色が特徴のボヘミアンガーネットは採掘量が年々減っているため、簡単に手に入らず希少価値が高くなっています。また、デマントイドガーネットはダイヤモンドのように輝き、オークションでは高値がつくことがあります。
ガーネットの買取相場は、ルース(裸石)の1ctで、ツァボライトガーネットは最高級のSクラスで7,500円、Aクラスのものは6,000円です。また、デマントイドガーネットのルース1ctはSクラスで75万円でAクラスのものは50万円です。
ガーネットのお手入れ方法
ガーネットの硬度は7ですので、簡単に傷つくことはありませんが宝石は全般的に丁寧に扱うのが基本です。身につけたガーネットは毎回外して柔らかい布で拭く習慣をつけましょう。汚れが目立つ場合は、洗面器にぬるま湯を張ってから中性洗剤を数滴入れた中で先が柔らかい筆などを使って汚れを取り除きましょう。
汚れが取れたらぬるま湯ですすいでから柔らかい布で拭きます。
ガーネットは基本的に熱や塩素系洗剤などには比較的強いのですが、温泉では外して入るようにしましょう。
ガーネットを買取してもらうために
ガーネットを売るときは、できるだけ高く買い取ってもらいたいと思うでしょう。そのためにできることは査定に出す時に購入した時に付いてきた鑑別書や保証書を一緒に持っていくことです。自分が持っているガーネットがどのくらいの価値があるのか、鑑別書に記載されていますので、それが偽物ではない証明になります。
また、査定に出す前に自分でできるクリーニングをしましょう。購入したお店で無料でクリーニングしてくれる場合もありますので、使っている時に定期的にクリーニングしてもらうのもガーネットの価値を保つ方法のひとつです。そして、普段から丁寧に使うことがガーネットを高く買い取ってもらうためにできる基本的なことです。
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