ナポレオンカーフとは?経年変化が魅力の革の手入れ方法や取り扱い方

ナポレオンカーフは毛羽立ちから飴色の艶革の変化が最大の魅力です。毛羽立ちから飴色に変化する艶のある革は、まるでアンティーク品を楽しむかのような感覚に近く、天然皮革を楽しむ醍醐味だと言えます。今回はナポレオンカーフの基本知識や手入れ法をご紹介します。

ナポレオンカーフとは?

ナポレオンカーフとは?

ナポレオンカーフとは、日本の職人がつくる心温まる革製品を届けるココマイスターが取り扱う皮革です。毛足の短い肌触りは手にしっとりと馴染み、これまで体験されたことのない上品な触り心地が特徴です。

市場に出回っておらず、日本でナポレオンカーフを取り扱うのは、現在のところココマイスターのみです。最上級に希少性が高く、大量生産せずに細部までひとつひとつ革職人の手で仕上げられています。

参考リンク:ナポレオンカーフ|COCOMEISTER

大人の贅沢を叶える、渋く格好良い革製品が魅了する。日本製ハイエンド革製品ブランド「ココマイスター」COCOMEISTER…

皮革は登山靴にも使われるオイルドヌバック

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ナポレオンカーフとは、オイルをたっぷりと染み込ませた皮革で、オイルレザーとヌバックの特徴を併せ持つことから『オイルドヌバック』と呼びます。

オイルドヌバックが多く用いられるアイテムの1つに高級な登山靴があります。染込みやすいように革表面を削り、たっぷりと動物由来の油分を染み込ませた皮革は、撥水性が高く雨や雪を弾きます。

雨や雪といった過酷な登山でも耐えられる丈夫な皮革は、高級登山靴として登山者に愛され続けられました。そんな愛されるオイルドヌバックですが、動物由来の油分をたっぷりと浸透させているため、皮革を通して湿気が逃げにくい点があります。

昨今では技術の進歩により、ゴアテックス素材が登山靴の主流となっているようです。

オイルドヌバックとはオイルレザーの起毛革

前述した通り、ナポレオンカーフはオイルドヌバックのことで、オイルレザーを起毛状に表面加工した皮革を指します。オイルレザーとは、皮から革へと防腐処理する時に、オイルを染み込ませて革をよりしっとりとしなやかな触り心地に加工します。

価格の抑えられた皮革には植物由来の油分が使われることが多く、高級なものになると動物由来の由布をじっくり時間かけて浸透させます。

オイルドヌバックは、オイルを浸透させやすくするために、ヌバックに仕上げてから更にオイルレザーに仕上げます。脱毛後の皮の表面をサンドペーパー等で毛羽立たせてヌバックに仕上げます。通常の皮革よりも手間も時間もかかる分、撥水性がありしなやかで柔らかい皮革へと仕上げられます。

原産地イタリアにこだわることで生まれたナポレオンカーフ

ここまでオイルドヌバックについて説明しました。ナポレオンカーフがオイルドヌバックと呼ばれず、最高級の皮革として別名で取り扱われるのは、原産地の技法と原料にこだわったからと言えます。

ナポレオンカーフには、生後6ヶ月までの仔牛のカーフ皮が使われます。皮革の原料選びも原産地をイタリアに限定し、イタリアで生まれた仔牛が選ばれます。イタリアは四季がはっきりしており、夏は日差しも強く乾燥します。冬には雨が多く続くことから、オイルレザーにはたっぷりと動物由来の油分が浸透されます。

たっぷりと油分の含まれた皮の表面をサンドペーパー等で削ると、これまでにないしっとりと手に馴染む感触の皮革に仕上がるのです。

ナポレオンカーフに使用されるバケッタ製法とは?

ナポレオンカーフに使用されるバケッタ製法とは?

イタリア皮革を原料にする理由は他にもあります。世界中で多くの方に愛されるイタリアの革はイタリアンレザーと呼ばれ、オイルをたっぷりと染み込ませた、しっとりとした手触りに深みのある色艶が特徴です。

ナポレオンカーフの原料につかわれる皮革は、イタリアンレザーをイタリアの伝統的な製法で仕上げられています。天然皮革を長く美しく使い続けるため、革職人が手作業で仕上げているのです。

イタリアの伝統的な天然皮革素材の製造方法

ナポレオンカーフに使われるイタリアンレザーは、ルネッサンスの中心地となったトスカーナに伝わるバケッタ製法という手法で防腐処理されています。バケッタ製法は1000年もの歴史があり、すべての作業を職人の手で行っています。ナポレオンカーフの場合は、仔牛のショルダー部分のみ使用されています。

バケッタ製法は柔軟性優れたショルダー部分のみ厳選する

バケッタ製法は柔軟性の優れた牛のショルダー部分を使用します。ショルダー部分の革は、肩を動かすことから柔軟性に優れており、首周辺のシワや傷も比較的多めです。ナポレオンカーフの場合には、仔牛のカーフ革を選ぶことで、育つ間につく傷も比較的少ない皮革といえるでしょう。

牛の脚部を煮だして丁寧に染み込ませる

バケッタ製法は、職人の手間暇を惜しまず、ひとつひとつ丹精込めて仕上げられるため、使い込むほどに染込んだオイルが馴染み、革に奥深さが現れます。

染み込ませるオイルには牛の足の脂肉と骨を煮込んだ牛脚油が使われており、動物性油脂の中では比較的ニオイも少なく固まる温度も低いことから、加脂として使うのに適しています。タンニンなめしで繰り返し染み込ませた革は、しなやかで柔らかな感触に仕上がります。

なめし剤は栗の木から採れるチェスナットエキスを使う

皮は腐敗しないように木の汁に含まれているタンニンとコラーゲンを結合させて防腐処理を行います。タンニンを含んでいる植物の中で、現在使われているのは南アフリカ産のミモザから抽出されるワットルエキス。

南アメリカ産のケブラチョから抽出されるケブラチョエキス。ヨーロッパ産のチェストナットから抽出されるチェストナットエキスです。

バケッタ製法はヨーロッパ産の栗のタンニンを使用します。

経年変化を楽しめるように皮革は染料仕上げ

私たちが目にする皮革の多くは、着色されていないヌメ革を除いて、なめしの工程で着色されています。着色には占領仕上げと顔料仕上げがあり、一般的に傷やシワが目立たないものは染料仕上げで行います。傷のあるものは顔料仕上げで革を覆います。

顔料仕上げは、革を顔料で覆うために全体的な革の色ムラは少なくなります。その半面、質感や風合いは損なわれます。時間の経過と共に革の質感が変わることは少なく、メンテナンスのしやすい革に仕上げることができます。

バケッタ製法では染料仕上げを採用しています。革に染料を染み込ませて着色するため、革の質感や風合いの残したまま天然皮革の風合いを楽しむことができます。革本来の質感を活かすため、水分に弱く、色落ちや色移りがしやすくもあります。

起毛加工とは?伝統的な本来の起毛皮革を知る

起毛加工とは?伝統的な本来の起毛皮革を知る

動物の毛ではなく繊維の毛羽立ち

ヌバックやスエードなどの起毛皮革は、手触りが柔らかくブラッシングすると毛足が波立ちます。このことから何かの動物の毛だと間違えやすい方も多いのではないでしょうか。実はこのヌバックやスエード等の起毛皮革は、革の繊維を毛羽立たせた皮革になり、動物の毛皮とは全く異なります。

動物の種類も本来は鹿や羊といった希少性の高い皮革を用いられていましたが、現在では安定的に手に入れることのできる牛を原料として生産することが一般的になっています。

本来のヌバックとは、牡鹿の銀面側を毛羽立たせた革

ヌバックは、nubuckと書き、buckは英語で牡鹿を意味します。本来は牡鹿の皮革をサンドペーパー等で起毛させた革のみヌバックと呼んでいました。しかし、現在では銀面側を毛羽立たせた皮革を総じてヌバック呼ばれるように変化しました。

本来のスエードとは、仔羊の内蔵側を毛羽立たせた革

スエードは、革の内蔵側をサンドペーパー等で起毛させた皮革です。元々は仔羊の革を起毛させた皮革のみをスエードと呼んでいました。しかし、現在では仔牛の革で作られたものをスエードと呼ぶようになりました。仔羊の革はとても柔らかくラムスキンと呼ばれています。

ラムスキンをサンドペーパー等で毛羽立たせ、毛足が短く柔らかな質感のものほど上質として扱われました。

ベロアとは、スエードの毛足を長く毛羽立たせた革

ベロアは、スエード同様に革の内蔵側をサンドペーパー等で起毛させた皮革になります。スエードに比べて毛足は長く、より柔らかな触り心地が特徴です。元々は成羊の革を起毛させた皮革のみをベロアと呼んでいました。しかし、現在では成牛の革で作られたものをベロアと呼ぶようになりました。

鹿の皮革を総じてバックスキンと呼んでいた

バックスキンとは、buckskinと書き、bucksは英語で牡鹿の複数形を意味します。backskinのように裏の皮と勘違いされやすいので注意が必要です。

元々は、牡鹿の皮を原料として取り扱った皮革を総じてバックスキンと呼ばれ、オイルドヌバックやヌバックなども含む牡鹿の皮革全てを呼んでおりました。現在の日本ではbackskinと解釈されて起毛皮革を総じてバックスキンと扱うようになってしまいました。

ナポレオンカーフの起毛は半年で艶革に変化する

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擦れや傷もエイジングと考え革の歴史を重ねる

ナポレオンカーフは、オイルをたっぷりと染み込ませた仔牛の皮革を起毛状に加工しています。

他の皮革と比べて革の触り心地は柔らかな起毛の触り心地から、染込んだオイルが馴染んだ艷革の触り心地へと変化します。変化するスピードはとても早く、使い始めてから約半年には艶のある革へと変化します。

ナポレオンカーフの注意点とお手入れ方法

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ナポレオンカーフは、ひっかき傷や擦れた傷が残りすい皮革のひとつです。ナポレオンカーフの細かな傷は、時間の経過と共に革の味となることから、あえて補修せずそのまま使い続ける方が大半です。普段のお手入れは軽くブラッシングを行う程度でよいでしょう。馬毛を原料としたブラシで丁寧に磨いてあげましょう。

汚れ

ナポレオンカーフは、起毛させていることから革の奥まで汚れが届きにくいのも特徴です。普段のお手入れは、基本的にブラッシングのみで十分です。あまりにも汚れが酷い場合は、起毛皮革用の汚れ落としを使いましょう。

色移り

ナポレオンカーフに使われている皮革は染料仕上げなので、衣服に色移りしやいです。特に水に濡れた後は色移りが起こりやすいため注意が必要です。保革油を塗る時も色が落ちやすいので、濡れた状態では使用を避けましょう。

水ぶくれ

オイルドヌバックも使うにつれ、革に染込んだオイルが抜けてしまいます。特に使い続けた革艶のある状態に目立ちやすくなるので、こまめな保革油と防水スプレーでのケアが必要です。少量の保革油を馴染ませて、両手の手のひらを広げた距離から防水スプレーでコーティングしましょう。

毛羽が寝て艶のあるアンティーク感を楽しむ

ナポレオンカーフの魅力は、オイルが染込んだ皮革を毛羽立たせたヌバックの触り心地です。使い始めは毛羽立った毛が擦れて傷のように見えることもあります。

しかし、使い続けていく内に全体の毛が寝て馴染む頃には、艶のあるオイルレザーを楽しむことができるようになります。ナポレオンカーフは毛羽立ちから飴色の艶革の変化が最大の魅力です。その間に付く傷は、後に革の味となりアンティーク品を楽しむかのような感覚に近いと言えます。