ブランド品のリユース利用はアリ?ナシ?業界の驚くべき現状と動向

今年のはじめにセリーヌのデザイナーが交代し、9月に行なわれた新作発表のあと、リユース市場がちょっとした活発さを見せています。前デザイナーであるフィービー・ファイロが手がけたセリーヌを求める動きがあったためですが、当然ながら公式ではもう取り扱っていない製品。リユース市場をあたるのはごく自然な成り行きなのかもしれません。興味をお持ちの方も、リユース品なんて…と思っている方も、今こそ詳しく知ってみませんか?

リユースとは?リサイクルとどう違うの?

リユースとは?リサイクルとどう違うの?

そもそもの話ですが、リユースとは何を指すのかご存知でしょうか。これは「品物をそのままの状態で再利用すること」を意味しています。要するに「中古品」と同義なのですが、その字面や言葉に含まれた印象があまりポジティブではないという観点から「リユース」を用いる業者が増えているようです。

一方のリサイクルですが、こちらは「不要となったものを一度資源に戻して再利用する」ことを指します。古くは古新聞とちり紙交換、今ではペットボトルを回収してプラスチック容器や化学繊維などに再生したりすることで知られていますね。

「誰かが不要と感じたものであっても、別の誰かは必要としている」。リユースはこの観点で回っています。

3Rって?他にもあるR

リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)、それとリデュース(Reduce)。これが環境省が推進している3Rにあたります。有限である資源を効率的に利用・再生産を行い、持続可能な形で循環させながら利用していく「循環型社会」を推進するための考え方で、日本では2000年に導入されました。

リデュース(削減)とは「ゴミの発生を減らすこと」。断捨離以前にそもそも買わないこと、と説明すると分かりやすいでしょうか。水を流しっぱなしにしない、エコバッグを持ち歩くなどといった程度なら可能かと思いますが、意識が過ぎると経済活動を萎縮させるだけではなく、人生の彩りまで削減してしまうおそれがあるのでご注意ください。

他にも、3Rにリフューズ(Refuse)、リペアー(Repair)を加えた5Rも挙げられています。

まず自分が楽しむ。大切に使用したそのあと、ただ捨てるだけの消費を回避し、そのままの姿で別の誰かの楽しみへとつなげる。リユースのサイクルはそのようになっています。ペットボトルを粉砕することから始まるリサイクルと異なり、特別で大掛かりな施設や行程を要さないことは一目瞭然ですね。

リユースの例と、身近にできること

しかしリユース、つまり手持ちの中古品を再利用してもらうとなると、取引相手が業者であろうと個人であろうと面倒に感じる人は少なくないはず。ところが日常生活において意外とリユース活動が隠れていること、お気づきでしょうか。

シャンプーや洗剤のボトルを詰め替えて使う。読み終えた本を誰かに譲る。ビールやコーラ、牛乳瓶などで使われているリターナブル瓶の返却をする。子どもが着られなくなった服を他の子にあげる。などなど、「もったいない」の気持ちはリユースの形になって現れるもの。ときにはリサイクルに出すよりも容易かもしれません。

フリーマーケットやネットオークションなどにおいても、出品する側だけではなく、購入する側になるのもまたリユースのサイクルのひとつですね。

流行が命!ブランドアイテムのリユース品はアリかナシか?

流行が命!ブランドアイテムのリユース品はアリかナシか?

「誰かが使ったものであるという経緯よりも、誰かが手放す程度に流行遅れのアイテムであることのほうが問題」。ものはブランドアイテム、流行りすたりに繊細なファッションの象徴です。その考えも間違ってはいないでしょう。しかし、本当にその一点で否定できるものなのかどうかは、冒頭で触れたとおりですね。

流行=最新は常識だけれど…

「あのバッグは流行遅れ」「いまさら着けるものじゃない」「恥ずかしくて持っていられない」流行に敏感なブランド愛好者の中には、そういった意見をもつ人もいるかもしれません。

ところが、オールドグッチやヴィンテージシャネルといったアイテムは、名の通り古い時代の作品であるにも関わらず時代遅れとは別の枠に位置づけられています。セリーヌのフィービー・ファイロ作品に対する需要もこれに近い位置にあり、製造されてから時間が過ぎようと支持するファンにとっては何の問題にもなっていません。

結局のところ物の良し悪しとはそのクオリティにかかるもので、流行はひとつの判断基準に過ぎないものなのではないでしょうか。

定番アイテムが定番である理由

こういった過去作品だけではなく、限定品やクラシックモデルなどを求めたとき、公式の案内は皆無に等しいもの。そこで選択肢のひとつとしてもっとも有力なのがリユース品なのです。

また、流行とはまったく無関係に、各ブランドにおいて定番、代表格とされているアイテムも存在します。エルメスのケリーやバーキン、シャネルのマトラッセ、流行りすたりに左右されることのない洗練されたデザインが長きに渡り支持された結果、不動の存在に据えられるようになったのです。

定番であるということは、ファッションにおいてもリユース市場においても、いつまでも安定した需要と供給が望めるアイテムだということ。少しでも安く手に入れたいのならなおさら、リユース品を考慮してみる価値があるでしょう。

リユース業界の現状と動向

リユース業界の現状と動向

ところで、かつては専門の業者一択だったリユース市場。ここ数年のあいだにその存在を脅かすものが活発に動いています。そう、フリマアプリですね。この項目ではフリマアプリの利点と難点、そしてリユース業者の是非についてご紹介します。

メルカリ、ラクマ…フリマアプリの魅力と罠

あの品物、これくらいの金額で売ったのに、店頭にはあんなに価格を上げて販売されてる!なんだか損した気分!…なんて、中古品売買においてはよくある経験なのではないでしょうか。そう思う人は少なくないのか、フリマアプリの盛況は衰える様子がありません。

売り手と買い手、その二者間だけで成立する仲介料を挟まない売買は、何よりも「高く売れる」「安く買える」のが大きな魅力。メールのやりとりや梱包などさまざまな手間と配慮を要しますが、仕事と思えば安いもの…なのは、あくまで平和なやりとりの話。

「ちゃんとクリーニング済みなの?」
「写真うつりはいいけど一部見えないのが気になるような?」
「そもそも、本物?」
「お金を振り込んだのにいつまで経っても届かない!」

これが安価な品物ならまだしも、ブランド品であればリスクは高まります。管理者からは「双方合意の上の取引」という事実で処理されてしまって、どうしようもなく泣き寝入り…なんてことがあっても不思議ではありません。

リユース業者は、鑑定者を備えた店舗(またはウェブサイト)を構え、査定、クリーニング、適切な管理などを含めた一切の責任を負っています。それが仲介料の主な内訳です。

不安なく本物を手に入れられ、万が一不具合があっても対応してくれる窓口があること。特に高級品を取り扱う売買については個人情報の観点も含めて、安全性が非常に重要な事項なのではないでしょうか。

右肩上がりのリユース市場

日本人には江戸時代からリサイクルとリユースの文化が根づいていました。持ち過ぎず、長く使い、ものを大切にする精神は、そもそもリユース市場を育てるのに適した土壌であったと言えるでしょう。

それに加えて、インターネットの普及が売買までの距離を縮めたこと。新品にこだわることが決してスマートとは言えなくなってきた価値観の変化。リユース品への抵抗感の低下。現代日本の経済情勢。地球環境保全の意識。ところどころ不景気や社会不安にともなう変化ではありますが、同時にリユース市場が繁栄する要因でもあるのです。今後もしばらくこの状況が続くことでしょう。

繁栄しているということはつまり、市場に出ている品数が潤沢ということ。希少品でなくとも、欲しいものを安く手に入れたいときはリユース市場を探してみるというのは立派な手段ではないでしょうか。

リユースショップに買い取ってもらうときに注意しておきたいこと

リユースショップに買い取ってもらうときに注意しておきたいこと

いくらブランドアイテムといっても、再利用が大前提。リユース業者は買取後にクリーニングやメンテナンスを一通り行うものですが、見るからに状態が悪いものは一部のレアアイテムを除き買取拒否をされる可能性があることに注意してください。

購入当初では次の誰かにつなげるつもりはないかもしれませんが、予定はどうあれ末長い使用を意識するのは大切です。革製品であればエイジングが楽しめますし、時計などでも後年になって思わぬ希少価値が出ることもあります。

保管状態に気を払うこと、ときどきメンテナンスを視野に入れてじっくりと眺めること…使用頻度が高ければ高いほど必要な配慮となるでしょう。

リユース=妥協ではありません

「もったいない」という、家庭的で庶民的に感じるこの意識を、ハイブランド品にまつわるラグジュアリー感と相容れないと思うのは残念な間違いです。

価値観の多様性が叫ばれている昨今。ハイブランドに対して真摯に情熱を傾ける人もいれば、ライトに楽しみたいという人もいるでしょう。新品ではなくリユース品を購入して出費をおさえ、別の趣味に回したい、という考え方もあります。それもまた賢明な手段のひとつ。

もちろん先にご紹介したとおり、出会えるだけでラッキーと言えるようなレアアイテムを掘り当てる一心で巡っている人もいることでしょう。その目的で訪れたわけではなかったのに思わぬ巡り合わせが…なんてことも。

最高級の素材を用い、職人が作り上げた技術の粋を、中途で捨てるのではなく最後まで使ってくれる誰かに託す。それは知らない誰かかもしれませんが、あなたかもしれません。人と人とのつながりで形作られる美徳、それがリユースなのではないかと思います。