革のエイジング方法は?日光浴とクリームケアでできる加工法・失敗したときの対処法

革製品を愛用している人の楽しみは、自分が持っている革がどんな色になっていくのか、自分だけの革の色や形に変わっていく過程を楽しむことだといいます。これを革のエイジングといいますが、今回は革のエイジングについてどのようなものがあるのか、注意点はどんなことがあるのかを解説していきます。

革のエイジングとは

革のエイジングとは

革のエイジング

エイジングとは、革製品を長く使っていくことで表れる色や手触りなどの変化のことです。革製品を愛用する人の中には、このエイジングこそが革を持つことの醍醐味だという人もいます。自分の手の脂がついて自分だけの色に変わっていく様子を見るのは、革製品ファンの楽しみのひとつとされています。

同じ革でも使い方ひとつでエイジングの速度が変わります。例えば、パンツのポケットに入れて使っていると服の摩擦や、圧迫で革自身の油でエイジングの速度が早くなります。一方、革製品を袋に入れてからバッグの中に入れることで、ポケットに入れるほどの摩擦は起こりませんのでエイジングの速度はゆっくりになります。

革製品を使う前にできるエイジング方法・日光浴

革製品を日焼けさせるなんて、考えたこともない人も多いでしょう。革製品をエイジングさせるためには、必ずしも日焼けさせる必要はありません。しかし、日に当てることできれいに経年変化していくのです。

この日光浴は特にヌメ革がおすすめです。ヌメ革を日に当てると、革を仕上げる時に使用したオイルが浮き出てきて、表面を覆ってくれます。購入したばかりのヌメ革を日焼けさせてオイルを浮かせることで、水に濡れたときや手の脂がついたときに、日焼けさせないで使った場合と比べるとシミやムラが出にくくなるのです。

革製品を使う前にできるエイジング方法・クリームケア

革製品を使う前にクリームを塗るケアがありますが、クリームはロウを含んだものを選ぶようにしましょう。

最初は目立たない場所でシミにならないか試してから使用します。シミにならなかったら、柔らかく乾いた布に真珠1粒分ほどの量のクリームをつけて革の表面に薄く伸ばします。たくさんつけすぎるとベタベタになってしまうので、注意し、革の表面に円を描くようにつけましょう。

全体に塗ったら1~2分そのままにしておきます。置いておくことで、クリームの栄養分が革に染み込んでいき、ロウの成分が表面に残ります。1~2分経ったら、表面のロウを乾いた布で全体を優しく撫でるように磨きます。そうすることで革にツヤが出て、一層エイジングを楽しむことができます。

色の変化を楽しめる革・楽しめない革の種類

色の変化を楽しめる革・楽しめない革の種類

タンニンなめし

タンニンなめしとは、植物からとれるタンニンを使って革をなめす方法のことをいいます。タンニンとは、一言でいうと「渋み成分」のことですが、このタンニンを使ってなめした革製品はエイジングしやすく、革の表面の質感や色合いが時間とともに変化していきます。新品の革と何年か使った革だと全く色が異なります。

タンニンのなめしの中でも特にヌメ革は、革本来が持っている色が変化していく過程を楽しむことができます。革製品の色の変化を楽しみたい人は、このタンニンなめしでできた革製品を購入してみましょう。

クロムなめし

薬品に浸けてなめす方法に「クロムなめし」があります。この方法で革をなめすと、革が丈夫になって柔軟性に優れます。このクロムなめしは、時間が経っても色が大きく変わることがあまりなく、革に柔軟性があるのでシワがつきにくい特徴があります。同じ状態を長く保ちたい人にはクロムなめしの革製品がおすすめです。

混合なめし

混合なめしは、タンニンなめしとクロムなめしの2つを組み合わせた方法です。タンニンなめしのようにある程度のエイジングが楽しめて、クロムなめしのように丈夫で柔軟性がある革ということです。

この混合なめしのコストはクロムなめしに比べると若干割高になりますが、両方の良い部分を取り入れるバランスがよいなめし方法なので、最近はよく使われる方法です。

染料仕上げ

水溶性の染料を革の芯まで染み込ませる方法を、染料仕上げといいます。この方法は、透明度の高い染料を使用するため、それぞれの革の風合いを損なわずにエイジングケアが可能です。染料仕上げは透明な染料を使用するため、革の表面についている傷を隠すことはできません。

顔料仕上げ(色の変化がない方法)

顔料仕上げとは、水に溶けにくい塗料を革の表面に塗って仕上げる方法です。この方法は原色の色合いを表現し、色落ちしにくくなるものの革のエイジングを楽しむ方法とはいえません。

ただし、ビビットな色合いを長持ちさせることができるのはこの方法です。色合いの変化を楽しむならタンニンなめしや染料仕上げをチョイスし、色を長持ちさせるなら顔料仕上げを選ぶといいでしょう。

革のエイジングを楽しむ

革のエイジングを楽しむ

オイルレザーを持つ

革のエイジングを楽しむには、コードバンなどのオイルレザーを持つのがおすすめです。オイルレザーとは芯までオイルが染み込んだレザーのことで、使用していくうちに革の芯からオイルがにじみ出てきます。そして表面をオイルでコーティングしてくれるので、それがツヤになっていきます。

一方、ヌメ革などの革は元々中にオイルが浸透していません。ヌメ革の表面にツヤが生まれるのは、クリームを使用してお手入れするか、人の手の脂が長い期間をかけて移るかです。オイルレザーに比べると革にツヤが出るのに時間がかかりますが、お手入れの楽しみを味わうことができます。

なめらかさを楽しむ

天然の革の表面には目に見えない凹凸があります。この凹凸は使い込んでいくうちに繊維が寝てきて、徐々に表面が滑らかになっていきます。シェルコードバンなどは血管の跡があるので、これらが使っていくうちに滑らかになってくるのを楽しむのもエイジングならではです。

形を楽しむ

革は繊維の集まりです。ポケットや鞄に入れて使ううちに硬かった革もしなやかになっていき、形が変化していきます。お尻のポケットに入れていくと形が変わりやすいので、形が変わるのが嫌な人は鞄の中に入れるようにしましょう。

革のエイジングを美しくさせる方法

革のエイジングを美しくさせる方法

毎日使う

革製品を毎日使うことで、人の手の脂がいい具合に革に移ります。それが革の表面をコーティングしてツヤを出すことになります。また、革を乾燥から守ってくれることにも繋がるので、革製品はしまいこむことなく毎日使うようにしましょう。

良い環境で使う

革を使うとき、保管する場所も革を美しく保つための重要なポイントになります。例えば、猛暑の季節に革製品を車の中に長時間置いたままにすると、熱が革に影響を与えて形が歪んでしまうことがあります。直射日光が当たる場所も革の表面が乾燥してしまうので注意しましょう。

また、高温多湿な場所に保管すると革にカビが生えてしまいます。革製品のエイジングを楽しむためにも、良い環境に革を置くことが重要です。

お尻のポケットに入れない

革にとって水は大敵です。特に汗に含まれるアンモニアは革を変色させてしまうため、汗を含むような使用方法は控える必要があります。

また、汗には塩分が含まれていますが、塩分もまた革製品を乾燥させる原因です。手ぶらで出かけたいときなど、革財布をズボンのお尻のポケットに入れてしまうことがありますが、身体から出る汗を革製品が吸ってしまうので控えたほうがいいでしょう。

革のエイジングを早めることはできるの?

革のエイジングを早めることはできるの?

乾拭きする

革製品を長持ちさせるためにも、普段からお手入れを欠かさないようにしましょう。使っていない革製品がある場合も、しまったままにせず、こまめなお手入れが必要です。手にとって手の脂を革に馴染ませて、柔らかい布で乾拭きするだけで徐々に表面にオイルが浸透していき、乾燥を防いでくれます。

レザークリームでお手入れする

革製品は過剰なお手入れをする必要はありません。しかし、場合によってはレザークリームを使用してお手入れする必要があります。表面の乾燥が気になるようになった場合はそのままにしておかず、革に合ったクリームでお手入れしましょう。

革のエイジングを失敗したら?

革のエイジングを失敗したら?

革のエイジングに失敗したらどうしたらいいの?

革の色を変化させるために日光浴をさせることがあります。ヌメ革の革製品をはじめの1ヶ月程、日に当てて色の変化を楽しむ人も多いと思いますが、季節によって日光浴の時間や場所を変える必要があります。

夏場に革製品を外に長時間置いたままにすると、色の変化どころか革の水分が蒸発し、ひび割れの原因になってしまうことがあります。また、季節に限らず直射日光が当たる場所に置くのは控えましょう。

では、エイジングを失敗してしまった場合はどのように対処したらいいのでしょうか。

ヌメ革のエイジングを例に挙げると、ヌメ革のエイジングで多いのは、「ヌメ革の水分を抜きすぎて乾燥してしまった」「クリームを塗ってシミになってしまった」という2点です。

革の表面が乾燥してしまった場合は、少量の保革クリームを乾いた柔らかい布につけ、薄く伸ばすように拭いていくと革が保湿され、回復させることができます。また、シミができてしまった場合は布を水に濡らして固く絞り、シミになった部分を軽く叩くようにして余分なクリームを取ります。

この方法である程度のクリームは取り除くことはできますが、もしもこの方法でもシミが残ってしまった場合は、シミになった部分と同じ量のクリームを他の部分に塗ってシミを目立たなくする方法しかありません。

正しい知識でエイジングを楽しもう

革のエイジングで重要なのは、正しい知識を持つことです。中途半端な知識で行うと革製品にダメージを与えてしまうことになります。間違った方法でエイジングを行ってしまい、革製品をダメにしてしまわないようにしましょう。

革のエイジングで経年変化を楽しもう

革のエイジングについて解説してきました。革製品の経年変化を楽しむ人は、お手入れや使い方にもこだわりを持ち、自分だけの革製品が出来上がっていく過程を見るのが楽しいようです。世界に一つだけしかない自分だけの色、自分だけの形に変化していくのを見るのは至福のひとときなのでしょう。

エイジングを楽しむためには、正しい知識を持ち「やりすぎない」ことも重要です。もし革製品を購入したら、お手入れをしっかりしてエイジングを楽しんでみてはいかがでしょうか。